2011年11月27日日曜日

油圧で吸気バルブを制御するFIAT Engine

(2012/4/15 ようやく写真と解説を更新しました)

FIAT FIRE 1.4TBというエンジンは、油圧で吸気バルブ(intake valve)を制御する。
いわゆるノンスロットル(Non throttle Engine)の一つである。ノンスロットルエンジンには、カムで制御するBMWのバルブトロニックもある。以下にMoter Fan Illustrated vol. 38 "エンジン・テクノロジー" (本体1600円)p.36-37 よりバルブ部分の写真を掲載する。本誌は、 http://amzn.to/IMIuEW  から購入できる。興味のある方は是非ご購入を検討ください。私は、他にも10冊ぐらい持っています。

この機構をフィアットでは「マルチエア」と呼び、共同開発先のシェフラー社では、「ユニエア」と呼んでいる。以下、シェフラーでの取材の記事である。
2009年9月から自然排気105hp, ターボ加給(135hp, 170hp)がアルファロメオ MITOに搭載され販売されているらしい。
FIAT/SHAEFLLER / UNI AIR SYSTEM
可変動弁系、最新のノンスロットリングシステム


吸気弁駆動油圧系のカットモデル

排気バルブは通常通りカム(cam)による駆動。カムは排気2つ吸気用の油圧生成で1つであり、これを1つのコントロールシャフト上のシリンダあたり3つのカムで実現している。

15年くらい前に多くのメーカが研究していたらしいが、スロットルをなくしてポンピングロスをなくすことによるエネルギー利得より、油圧制御系にロスが上回ってしまうという欠点があった模様。つまり、通常のカムによるバルブ制御であれば、バネを圧縮したエネルギーはバネが伸びるときにカムに回収されるが、油圧ではそれがロスになってしまうということらしい。

FIATのエンジンでは、バルブトロニック以上の10%の燃費向上を達成するらしい。どこに秘密があるのかは不明とのこと。

(2012/4/15追記)おそらくは、駆動力はカムで油圧を作り得ている。つまりバルブ戻りの時の力は、油圧からカムに戻る。電動制御は途中の弁だけであり、このため、直接のカム式の直接の弁駆動に比べ電動制御に必要な余計なエネルギーも少なく、バルブスプリングに貯まったエネルギーも回収できるため、効率低下がないのではと思っている。


吸気弁の動弁系の動作概念図

カムシャフトの位相の途中で、吸気バルブのリフト量を制御しバルブを早閉じして、ミラーサイクルを実現したり、吸気行程で2回バルブを開くことも可能らしい(効果は疑問とある)。


複数回の吸気弁、開放のイメージ図。赤い部分が弁が開く部分。白い線が、常に電磁弁を開いたときの吸気弁の開き。


上記右側にあるグラフがリフトパタンのグラフ。上から。
  1. フルリフト・フル開角
  2. 遅あけ・早とじ・リフト量制限
  3. 早閉じ・要はミラーサイクル
  4. パーシャルロードと言われ、若干早く閉じ、バルブオーバラップをゼロにして、ポンピングロスを軽減する
  5. マルチリフト
驚くべき自由度の高さである。機構的には、シリンダー毎、1燃焼ごとに燃焼パターンを切り替えることも可能。将来的にはディーゼルへの応用も視野にはいっているらしい。

以下のYouTubeに動作説明の動画がある。埋め込みなので、クリックすれば動画が再生される。





このモータファンの雑誌はとても良い。以下の中で解説した。車を知れば動かすのがより楽しくなる。
2011年11月27日日曜日: ミシュランのアクティブホイールとMotor Fan illustratedの勧め

動詞p.73からエンジンの全体像を引用する。


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