2011年12月4日日曜日

サスペンションの奥の深さ - ジオメトリについて

サスペンションは奥が深いと言われる。少しだけ分かってきたので解説したい。間違い等あれば、ご指摘願いたい。

Motro Fan illustrated vor.38 エンジンテクノロジー p.018にあるBMW7シリーズ(F01 / F02型)のフロントのハイマウント型マルチリンクサスの図を以下に引用する。左が前方である。

lower link, Anti-roll bar, tie-rod, lower link (back),   Hub carrier
BMW7シリーズ(F01/F02)のフロントのマルチリンクサス。左が前方。

タイヤの接地角の用語)

以下にタイヤの接地角の用語の図を示す。
以下にあるのは、プリウスのフロントサスであり、マクファーソン・ストラット(俗にいうストラット)である。

Toyota - TISより、(前輪側方から見た図、左が前方、ストラットサスペンション)
キャスター角、キングピン軸、トレイル値

Toyota - TISより、キャンバー角
ストロークによるトレール値の変動)
上記の図で、キングピン軸が斜めである。バネとダンパーの方向にストロークするので、車高が変わるとトレイル値が変わる。一方、ダブルウィッシュボーンなどは、タイヤが水平にストロークする。キャスター角は、実存転舵軸としてハブの軸に設けてあるので、設計自由度も高いし、タイヤ中心とのずれもへり、操舵の正確性も高まると思われる。

キャンバー角の変動)
上記下図bのように旋回すると車体がロールするので、転舵軸は垂直に保たずむしろ斜めにした方が、タイヤのグリップがよい。これを制御するために、ストラット式のサスでは、キャンバー角方向に、キングピン軸すなわちダンパーを斜めに付けている。
キャンバー角の変動に関しても、ダブルウィッシュボーンやマルチリンクなど平行リンク機構のほうが設計自由度が高い。これはアッパーリンクを短くすることで達成される。

F1ではタイヤがばかでかく、タイヤ回転軸と重心の高さがほぼ一致しているのでロールがきわめて小さいと思う。そもそもボディ下面を路面ぎりぎりにして、グラウンドエフェクトを得ているので、ロールすると車体が路面に接触する。アンチロールバーも必要無い。

には、「ネガティブキャンバーにすると、旋回性能は高まるが、タイヤが変摩耗するので、最近の車はほとんどキャンバーを付けない」とある。F1では、タイヤは動摩擦係数を稼ぐために溶けて摩耗しどうせ交換する。なので旋回性能向上に注力する。これが、F1が、強いネガティブキャンバーの理由かと思う。

もう少し重心の高いレースカーは、ダブルウィッシュボーンのアッパーリンクが若干短い。これは上記のロール時のタイヤの設置性の向上だと思う。ただし、これらもサスのストローク量は小さいし、ボディ下面は路面に近く、ロールは小さく押さえている模様。

もちろん、ストロークの量すなわち路面とボディ下面の高さや、アンチロールバーの強さやサスの堅さも関係してくると思う。左右のサスをアンチロールバーでつないでロールを押さえ押さえるとリジッドに近くなるし、サスを堅くして転舵軸の変動を押さえるのも、乗り心地を犠牲にすることになりかねない。乗り心地とのトレードオフだと思う。

以下にはショールームにあった高級スポーツカーのフレームモデルにあったサスの写真を掲載した。
2011年11月26日土曜日: Tesla Model S - 高級EV自動車の4ドア版
また、アクティブホイールというのもある(以下)。この中で、慶應大学のエリーカに用いられているタンデムホイールサスペンションについても紹介した。アンチロールバーを導入して、ロールを押さえると、独立懸架の特徴も損ねる。アクティブサスペンションであれば、乗り心地と操舵の正確性を両立させれる可能性がある。今後の動向に期待したい。
2011年11月27日日曜日:ミシュランのアクティブホイールとMotor Fan illustratedの勧め
サスの剛性)
ブレーキング、加速、横G、ハンドリングなどで、急な加速度を受けたときに、サスがぐらつかない剛性が重要だといわれる。この点でも、ストラットよりは、ダブルウィッシュボーンの方が剛性が高いし、リジッドだといわれる、トーションビームの方が優れている面もありそうに思える。

トーションビームのリアサスについては以下に書いた。トーションビームは、プリウスなど、Cクラスといわれる普及型以下のFF車で、リアサスペンションとして広く使われている方式である。


2011年11月27日日曜日: トーションビームサスペンションの利点



サスペンションは奧が深い。

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