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http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG2701E_X21C13A1000000/
という記事が出た。このインタビューをした、エイモリー・ロビンスは、30年以上前に再生エネへの転換の道筋を示した「ソフト・エネルギー・パス」という概念を提唱している。氏の主張は以下のようなものである。再生エネルギー推進派の意見なので、若干、日本の現状にはあっていない点も含まれているように思う。冒頭記事から氏の主張を抜粋すると以下の3点である。
1. 「日本以外の先進国で小規模分散型発電への転換が着実に進んでいる。ひとつの理由が、電力市場の自由化など規制緩和が進んだ結果、再生エネのコストが劇的に下がり、原子力の経済性の低さがはっきりしてきたことだ。電力需要も予想されていたほど増えず、大規模集中型の発電所の役割は低下している。IT(情報技術)などを使いピーク時の電力需要を抑える手法(デマンド・レスポンス=需要応答)が広がり始めたことも、分散型の普及へ追い風になっている」
2. 「2008年以降、世界全体で新規に稼働した発電設備のうち半分は再生エネによる発電所だ。エネルギー需要が急増している中国でも再生エネへの投資を急拡大している。
米カリフォルニア州では太陽光や風力発電のコストが新設の天然ガス火力よりも安くなっている。大規模集中型から分散型への転換は、エネルギー供給の大変革といってもよい」
3.「一方で、日本では大規模水力を除いた再生エネの比率は1%程度にとどまる。東日本大震災で原発の運転が止まり、電力不足を補うため石炭や石油を使う火力発電所を増やしているが、これはこれは世界の潮流に逆行し、残念なことだ」
どうバイアスしているか)
後半で裏付けの資料を引用するが、
- に関しては、まず再生可能エネルギーのコスト、特に太陽光発電のコストは今もって高い。ただし、日本は技術開発が遅れているのは確かで有り、先進国の中でもとりわけ高い。
- さすがに米国でも、まだ太陽光や風力のほうが天然ガス火力や石炭火力などよりもコストは高い。もちろん、ガスの価格にも依存する。
- 日本では火力発電所を増設しているのではなくて、停止していた火力発電所を再稼働している。もちろん、再生可能エネルギーへの移行も鋭意続けている。
- 【原発の不都合な真実】インタビュー : http://www.47news.jp/47topics/e/223620.php
- 米国が2050年までに石油・石炭依存から完全脱却!? 人類は大胆なエネルギーシフトを実現できるのか【特別対談】ロッキーマウンテン研究所所長 エイモリー・B・ロビンス博士×東京大学名誉教授 山本良一氏: http://diamond.jp/articles/-/14513
- 自然エネルギー財団シンポジウム分散型エネルギーが創る新しい電力ネットワーク ―― エイモリー・ロビンスと語るhttp://jref.or.jp/activities/events_20131008.php
論点の整理)
以下、脱線を交えつつ、エイモリー・ロビンスの主張「日本では再生可能エネルーシフトが進んでいない」に対して反論していくが、論点が分かりにくいとコメントをいただいたので、まず整理しておく。そのうち、blog自体を整理して書き直す予定であるが。。
- エイモリー氏の主張) 日本で再生可能エネルギーシフトが進んでいない
- 反論) 日本でも、ちゃんとやっている
- 賛成) ただし、値段が割高
- 反論) もともと電気代が高いためかグリッドパリティも達成している
- 賛成) (やや脱線) 電気代が高いのは、液化天然ガス(LNG)等の燃料を高く買わされているから。 もちろん、経済的には安い方が望ましい。
- 脱線) 日本のマスコミの取り上げ方には問題がある(冒頭の記事への不満)
一方で、米国でクリーンエネルギー関連のコンサルタントをやっている阪口氏のサイト
http://d.hatena.ne.jp/YukioSakaguchi/
には、世界の再生可能エネルギーの現状に関する定量的なデータが大量に掲載されている。
氏は、米国知り子バレーを中心にグリーン関係のコンサルタントとして活動されており、日本語で沢山公演をされている。
2013年夏に機会があって講演を聴いたが、実に多様なデータを持っておられ、太陽光発電に関する実体。つまり、以下の様な状況が理解できた。本当は、8時間くらい掛かる再生可能エネルギーに関する内容を100枚強の資料にまとめて、1時間ちょっとの持ち時間で駆け足で説明していただいたが、技術・経済・政策など、多角的でバイアスしていない情報を得られたと思う。
公演内容を簡単にまとめておくと。。
- 各国のもくろみ
- 中国は太陽電池を売りたい
- 米国は、新技術で世界をリードしたい
- 現状
- リーマンショック頃の米国の国策で資金が大量に太陽光発電ベンチャーに流入したが、なかなか成功していない
- 中国は2007年頃太陽光発電ブーム時に、シリコンウェハーが欠乏したので、自国量産体制を整えた。だが、ブームが去って、太陽電池セルが市場にだぶつき、市場は価格競争におちいり、生産業者のつぶし合いになっている。中国は最近ダンピング裁定がでた。が、太陽電池の値段が下がるのは発電業者にとっては望ましいこと。
- LCOE(以下で述べる)的には、まだ少し技術革新が必要。
- 通常の太陽電池では、もはや革新は見込めないが以下が有望
- 集光型で、高効率だが高価な太陽電池セルを使い、効率を上げる
- 太陽熱式で、電力供給を安定化。日没後もしばらく電力供給可能
- 米国は、旧式の石炭火力が多く、これを新たなエネルギー源に置き換えCO2排出を減らしたい。ただし、発電容量にかなり余裕があるので、太陽光・風力等出力がばらつく再生可能エネルギーが増えても、吸収余裕がある。日本は、原発停止で、この電力余裕がほぼゼロなので何らかの対策が必要。(私見: 需要の柔軟化、電力逼迫時の企業の操業停止などは考えられるが、産業競争力への影響が心配。そもそも、日本人は勤勉すぎるので、それくらいが丁度良いかもしれないが。。)
ひとつ注意したいのは、米国は、NRA(全米ライフル連盟)や、(遺伝子組み換え)が有名なように、業界団体ロビーストが政治に圧力をかけて、それによって、産業政策が政策的にバイアスすることである。日本のスーパコンやTRONをたたいた、スーパー301条や日本車叩きもこれにあたると思う。
太陽光発電の実際)
先の阪口氏のサイトから太陽光発電関係を抜粋すると http://bit.ly/18KKkbQ になる。
各種太陽光発電のLCOE(Levelized Cost Of Electricity) http://d.hatena.ne.jp/YukioSakaguchi/20121228
これを見ると、一番コストの安いCPV(集中型太陽光発電)のLCOEが現状で$0.11/kWh、すなわち、$110/MWhになる。2020年には、どの方式も$100/MWhを切ることが期待されている。
一方、
から、Figure1にある2016年における各種発電方法のLCOEの予測を引用する。
つまり、2016年でLCOE $100/MWhを切らないと、他の発電方式にコストで太刀打ちするのは難しく、天然ガスのLCOEは $50/MWhを切っている。つまり、冒頭の日経新聞記事でのエイモリー・ロビンス氏の2番目のコメントと矛盾している。
LCOE:
http://cleantechnica.com/2013/10/18/grid-parity-low-lcoe-driving-34-global-renewables-capacity-2030/
にある。各国の風力発電のLCOEの図を引用すると日本だけは極端に高い。
ここにある日本の価格を1ドル100円で換算すると、43円/kWhくらいになる。
wiki: http://ja.wikipedia.org/wiki/グリッドパリティ
つまり、最終分配まで考慮したLCOEが他のエネルギー源に対して、競争上対抗できるようになるのがグリッドパリティであり、
http://www.solartech.jp/environment/economy.html
には、以下の様にある。上記の図の太陽光発電において、日本のLCOEがとんでもなく高いのに、ここには以下のように書かれている。
日本国内での2010年における太陽光発電のコストは、おおよそ30円/kWhと考えられ、グリッドパリティ達成にはあと一歩といった状況です。米国の他の発電方式に比べて、日本の他の発電方式のLCOEが高い。つまり、日本の電気代が高いので、割高な太陽光でもコストがペイするという言い分なのかもしれない。
が、電気価格は産業界にとっては重大なコスト要因だと思う。他にも要因があるだろうが、電気が安い海外に産業が流出すれば、国内労働市場の減少やGDPの低下にもつながりかねない。
割高な日本の燃料費)
日本は2011年の福島原発事故以来、原発を停止し、CO2消費を抑えつつ電力を供給するために、大量の液化天然ガス(LNG)を買っている。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fuwaraizo/20130829-00027509/ にあるように、世界でも断トツの輸入量であり、
http://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/data/fy8_3.pdf にあるように、2010年から2011年で輸入金額は倍増している。
よく知られた話だが、原発を停止したために、値段より量を優先しないとならないということで、天然ガスを割高で買っている。
http://president.jp/articles/-/6730 (2012年資料) には、日本が買う天然ガス(LNG)は米国の9倍も高いとある。欧州に比べてもかなり高い。以下にここから図を引用する。
原発停止と運動するのもよいが、足下を見られるようなやり方では、やはり損をする。
「安く売ってくれなければ原発を動かすからいいよ」とやるか、「地球温暖化は目をつぶるから、石炭でいくので、天然ガスが高いなら買わない」とやるなど、したたかさが必要に思う。少なくとも、再生可能エネルギーはすぐには立ち上がらないので、これは切り札にはならないと思う。
最近自民党が、「愛国心」といっているが、これは言葉の選び方が悪く、「国益」というべきだと思う。世界各国は国益重視で動いているので、マスコミも国民も少しは「国益」を考えた行動をしてほしいという政府の気持だと思う。
日本のマスコミ)
日本の新聞やマスコミには問題が多い。別途記事にするが以下にまとめておく。冒頭のエイモリー・ロビンス記事はインタビューなので、裏をとるのは失礼だろうが、結構、ミエミエのウソの新聞リークなどや、小学生でもわかるような永久機関記事でも平気で記事になっていて、驚く事がある。
- 主張の総括をしない。これは顧客も速報性に価値を求めているため、お互い様なのかもしれない。
- タブーが沢山存在する。 http://ja.wikipedia.org/wiki/報道におけるタブー には、冒頭に以下のようにある。「およそ表現の自由が認められている国では、報道の自由が認められており、少なくとも建前上は報道にタブーなるものは存在しない。日本においても日本国憲法により言論の自由・報道の自由が認められており、見かけ上はタブーは存在しない。しかし、実際には諸事情により、マスメディアが特定の事件や現象について報道を控える話題・問題が存在する。日本ではキー局や全国紙など広範囲に影響を与えるメディアほどその傾向が著しく、こうした姿勢に対する批判も存在する。」
- 民放は(放送インフラを提供する) NHKの批判ができない。
- 記者個人の報道ではなく、社としての報道になる。
- 新聞では社やデスク、テレビではディレクターの取材方針に会わせて取材内容を取捨選択する風土もある。関連して、「朝日新聞は「結論報道」から撤退せよ」blogos - 池田信夫 http://blogos.com/outline/74891/
以前、私が受けた、某テレビ局のローカルニュースの特番の取材でも、取材で沢山話したコメントが全てカットされ、ディレクターの意向にあう部分だけになるよう編集されて、放映され大変がっかりしたのを思い出します。 - 科学技術に特に弱く、ほとんどウラをとることはしない。(ヒドイ例を、後日いくつか紹介したい)
- 批判はするが、提案はしない
- 自分達の業界を守る
- 私企業なのでしょうがないが、視聴率・講読率が第一であり、世間の流れにおもねる。一方で、知る権利といいつつ、必要もないプライバシーを暴く
- 特にテレビでは、「分かりやすさ」という理由で、ヤラセが横行している