それは、Computerの発展史にも見られる。一旦作られた分かりやすいグラフィック入力が、一時消滅し、また戻ってきている。以下に書いた。
2012年3月3日土曜日: Computer History Museumにいってきた
その点で、技術の発展史を学ぶことは参考になる。もちろん、激しく昔の技術にまで戻る必要が必ずしも有るわけではない。が、特にComputer Scienceでは、歴史や古典を学ぶこととは、特に米国ではおざなりになっている。
Space shuttleとその後)
Space Shuttleは、再利用可能な宇宙船を目指した。が、以下の
STS-133 (最後のDiscovery打ち上げ) の映像であるが、14:56秒のところ、T=+3:53で、外部燃料タンクの断熱材とおぼしき、かなり大きな破片が剥がれて落ちるのが写っている。以下の写真の黄色の丸の部分である。
シャトルのタイルは結構危ういシステムだったので、次のConstellation/Orion http://bit.ly/LVOk6H では、アポロのような指令船+一体成形の耐熱シールドに戻す。指令船は再利用する。
wikiでの解析などから)
以下、Project Constellation by Tim McElyea (APOGEE BOOKS) $9.95 : http://amzn.to/MdMgKD
より、2つの図を引用する。
まず、p.18の図である。
シャトルは、打ち上げ従量4.5Mlbs (2,041トン)に対して、LEO(Low Earth Orbit: 低高度衛星軌道への)打ち上げ重量が56klbs (24.9トン)である。つまり、打ち上げ重量の1.2%の重量の衛星しか、低軌道衛星軌道に打ち上げられない。
一方、それよりも古い設計である、Saturn Vは、打ち上げ重量が、6.5Mlbs (2,948トン)に対して、LEOが262klbs (110トン)である。つまり、打ち上げ重量の3.7%の重量の衛星を、低軌道衛星軌道に送り込める。
現在、凍結されているが、Shuttleの次期宇宙計画であるConstellation計画では月や火星への宇宙船をAres IVで先に打ち上げておいて、あとでAres Iで乗員と指令船であるOrionカプセルを送り込む方式である。
Ares I は、打ち上げ重量2.0M lbs (907トン)に対して、48k lbs (21.8トン) であり、これは2.4%にあたる。
Ares IV は、打ち上げ重量7.3M lbs (3,311トン)に対して、200k lbs (90.7トン) であり、これは2.7%にあたる。
AresでもSaturn Vより、打ち上げ時の重量で、LEOを割った比率が悪いのは、燃費(比推力http://bit.ly/NAdsTr )が小さいが、低コストの固体燃料ロケット(シャトルで固体燃料ブースタに使われたものの増力型)を使い、これを再利用しているためであると思われる。が、Space shuttleに比べると、はるかに比率は良い。
再帰還のシールドもアポロ形式なら打ち上げ時には、前段ロケットとの間で保護されているが、むき出しなので、これが破損して、コロンビア号の事故につながっている。上記写真でも一歩間違えば事故になる。
なにしろ、ずっと技術が未熟であった、アポロ計画では、打ち上げ後には一人の死者もだしていない。もっとも17号までしかなく、135回打ち上げたシャトルにはかわいそうであるが、製造された6機のうち2機を打ち上げ後の事故で失い、どちらも乗員全員が死亡している。
これには、まだまだ安全が確認されていない宇宙船を、あたかも商業ベースのように利用しようとし、打ち上げ日程を優先したという、組織運営の問題も指摘されている。
また、wikiには、
スペースシャトルの最終飛行も終了し、総決算の計算をしてみると、なんと135回の打ち上げで2,090億ドルもの費用がかかってしまっていた。一回の飛行当たり、通常の使い捨て型ロケットを打ち上げるよりも、はるかに高くついてしまっていたのである。とある。
Ares I ロケットの構造はSaturn Vに戻っている)
以下に、先のProject Constellation本の、p.22の図を引用する。
いくつかの点でSaturn Vに戻っている。以下に列挙する。
- Space shuttleのメインエンジンSSMEをやめ、Staturn Vの2段め、3段目に使われた、J-2エンジンを改良したJ-2Xエンジンに戻っている。理由は、SSMEは効率向上を求めて複雑化し値段が上がりすぎたこと、軌道上で再点火できないことである。
- 2段目の燃料タンクは、Saturn Vで開発された、軽量化に向いた統合隔壁に戻している。 http://bit.ly/MdOfhW の「将来的な利用」に説明がある。
- 理由は分からないが、Space shuttleでは、重たい液体酸素は上側、液体水素は下側に配置されている。これも、Aresの2段目では、Saturn V同様に液体水素を上側に戻している。
- 先に述べたように、Crew moduleの底にある再突入用の耐熱盤は、発射時はロケットの合間にあって保護されている。
- 異常事にもApollo計画までと同様に、脱出ロケットで指令船を脱出させられる。
- 一段目ロケットと、指令船のみ再利用する。ただし、指令船の耐熱シールド(シールドが一体整形で丸ごと交換)は頻繁に交換する。
松浦晋也『スペースシャトルの落日/失われた24年間の真実』に、実に幅広く徹底した批判が出ているらしい。殆ど全編が批判らしいが、
「第三章 そもそも間違っていた設計コンセプト」
「第四章 世界中が迷惑し、だまされた」
の章だけで100頁ある。
批判は多岐にわたるらしいが、再利用が間違った手段というのは(低コスト化のための手段として間違っていた)、主要なポイントになっている。それも、翼を持って飛行場に戻ってくるのは、余りに無駄、という批判がこれでもかと強調されているらしい。
液体水素ロケット)
Space shuttleのSSMEとは違うが、液体水素/液体酸素ロケット(以下LH2LO2と呼ぶ)を1段目に使うのは、メリットばかりではない。
Ares IVでは、1段目にJ-2Xよりは推力の大きな、RS-68を使う。まだ、補助の固体ロケットを使うので良いものの以下の欠点がある。
Space shuttleのSSMEとは違うが、液体水素/液体酸素ロケット(以下LH2LO2と呼ぶ)を1段目に使うのは、メリットばかりではない。
Ares IVでは、1段目にJ-2Xよりは推力の大きな、RS-68を使う。まだ、補助の固体ロケットを使うので良いものの以下の欠点がある。
- 燃費は良いが、液体水素の比重が小さいので燃料タンクが大きくなる。以前ざっと計算したところ、110mのSaturn Vの1段目をLH2LO2にすると、30mほど長くなるとなった。計算式を確認してから、再度掲載する。
- 超低温なので扱いが難しい。
Ares I)
人を運ぶAres Iの1段目は、シャトルのSRBを改造した物を使う。これは回収再利用。
推力の方向は可変可能であるが、花火と同じ固体ロケットなので、燃料にあけられた空洞(グレイン形状) で計画された、推力変動パタンに固定された推力になる。
http://bit.ly/MdPlKr を参照。
推力の方向は可変可能であるが、花火と同じ固体ロケットなので、燃料にあけられた空洞(グレイン形状) で計画された、推力変動パタンに固定された推力になる。
http://bit.ly/MdPlKr を参照。
人が乗るロケットに、推力強度を状況に合わせて制御ができない固体ロケットだけを使うのは、かなりチャレンジングだと思う。
Orion計画がぶっ飛んでいるのは、月着陸船もLH2LO2であること。予算危機なので、space Xでお茶を濁す可能性もあるらしいとか。
燃料の長期保存が難しい。点火失敗すると帰って来られない。ということで、Apolloでも、点火失敗がゆるされない指令船と月着陸船には、自己着火型(N2O4とUDMH) の燃料をつかったのである。Shuttleの軌道上エンジンもこの燃料である。http://bit.ly/xnDZvI
(ちなみに、この推進剤は猛毒なので、Space shuttleは、地上に帰還してからも、この残燃料除去が確認されるまで、誰も近づけない。)
いくら燃費(比推力)がよいからと、ここにLH2LO2を使うのは、かなりチャレンジングである。
どうありたいか)
Space shuttleの引退を残念がるのもよい。Space shuttleを賛美するのもよい。
しかしやるべきコトは、良かった面を認め、成功を認めると同時に、失敗を反省して、次に繋げることである。成功ばかり褒めていたら、また次で失敗する。
(ちなみに、この推進剤は猛毒なので、Space shuttleは、地上に帰還してからも、この残燃料除去が確認されるまで、誰も近づけない。)
いくら燃費(比推力)がよいからと、ここにLH2LO2を使うのは、かなりチャレンジングである。
どうありたいか)
Space shuttleの引退を残念がるのもよい。Space shuttleを賛美するのもよい。
しかしやるべきコトは、良かった面を認め、成功を認めると同時に、失敗を反省して、次に繋げることである。成功ばかり褒めていたら、また次で失敗する。
なぜ、技術の往復がおきるのか)
検証したわけではない。が、以前やっていたCPU開発では、こういうことであった。
検証したわけではない。が、以前やっていたCPU開発では、こういうことであった。
- 2チームで開発することで、完成時期をずらし、開発時期を短縮する
- 新しいアイディアを出すことが評価されがちであり、以前のものを再利用するよりは、新たなものを提案し、成果を出したがる。
- 新たなチームは外から連れてくることが多く、様々な設計文化が違うので、なかなか意思疎通が難しい。
その結果、以前のやり方の問題を見付けて、否定することが起きやすかった。
本来は、冷静に良いところは、受け入れ、悪いところを改善すべきである。競争させるのは悪いことではない。が、負の側面が出ないようにするのは、マネージメントであって、マネージメントまでも2チームで競争してしまったり、一番上に最終利益を考えるトップマネージメントが居なければ、非効率が起きる。
Apolloまでは、NASAの一番トップに、堅実なドイツ人である Wernher Magnus Maximilian Freiherr von Braun (フォン・ブラウン)http://bit.ly/NAekHF がいたので、上手く回せていたのかもしれない。
Apolloまでは、NASAの一番トップに、堅実なドイツ人である Wernher Magnus Maximilian Freiherr von Braun (フォン・ブラウン)http://bit.ly/NAekHF がいたので、上手く回せていたのかもしれない。