ITメディア http://nkbp.jp/HRwpRS にも記事がある。
平たくいえば、システムインテグレーション(SI) に、分散処理技術を導入しようというものであり、SIを言い直しただけだとも思える。
これは米国の研究でも流行のようであり、去る2012/4/2-4にStanford大学で行われた、Computer Forum Annual meetingでもこの傾向の研究と発表が多かった。具体的には、
- オンライン大学に関する技術
- 途上国での携帯端末の活用
- SNSにおける携帯端末の活用。Facebook独占からの離脱
などである。他にも 4) 知識処理、5) プライバシー・セキュリティ に関する発表があり、この5つが最近の研究の流行を反映している。知識処理を除いては、基礎技術やプラットフォーム(装置)の研究というよりは、ITをいかに、実社会に応用していくかという研究で有り、かなり社会学的な側面が強い。
1.に関しては、米国の教育コストの増大があげられている。(そのうち、別記事に分割し、補足・整理するが写真を記載しておく。
私立であるStanford大の収益構造はどうかわるのか? 以下の観点をどう考えているのか質問したら、「うーん。それは、ランチの時の話題だねぇ。」と、はぐらかされた。経営課題でもあり、経営専門家とも議論しないでの即答はしにくいのであろう。
1.に関しては、米国の教育コストの増大があげられている。(そのうち、別記事に分割し、補足・整理するが写真を記載しておく。
オンライン教育の参加者数 |
オンラインにすることで、学びが活性化 |
米国での各種価格の高騰。一番上にある、一番高騰している価格が教育費である。 これを無料のオンライン教育でなんとかしたいとStanfordは考えている。 |
- 授業にでている正規の学生と、無料のオンライン学習の学生との不公平感から、学費を払う学生が減って、大学の収益構造がかわるのでは。。(学びは無料だが、単位取得や学位取得を有料にするとか?? それで、コストの構造は変わるのか。。ロングテール対象なので、安く出来るのか。などいろいろ考えられうる。)
- オンラインシステムにともなう、装置や維持コストの負担。
Cyber Physical Systemに関して、以下の発表から重要な知見を引用したい。
用語)
- m4d: mobile for development : 途上国(?)支援のための携帯端末
- human center design: 人間を中心におく設計
以下のTerry Winograd教授による研究発表は、ケニア・ナイロビでの携帯端末の応用である。ケニアの携帯普及率は非常に高く、環境はシリコンバレー以上に進んでいるとのこと。ところが、水道は整備されておらず、水を給水ポイントに買いにいくような状況。水道管破裂とかで給水ポイントが上手く機能していないことが多く、その場合には、水を探して給水ポイントを歩きまわり、一日のうち数時間をこれにつぶすらしい。給水点情報を、携帯電話の活用でIT化する実験である。
Stanford大学の研究をみていると、米国は、もはや発展が見えてきた中国よりも、アフリカや南アジアなど、これから発展する大市場に目が向いているようである。
ケニアでの実験。魚の市場価格を携帯電話で配信するシステム。これを3つの地点で導入した。横軸が日にち。縦棒が導入した時点。縦軸が魚の市場価格。導入したとたんに価格の変動が小さくなっている。漁師の収入が安定したということである。モバイルを利用したITの有用性の根拠として示していた。 |
モバイルを利用した技術を導入するには、深い知識に加えて、幅広い知識に基づく、システム設計の能力が必要である。という図。米国で30年以上前にT字型人間というのが流行った。日本では、これを拡大して、より知識彫り込みの強いV字型人間と、叫ばれて、もう30年以上経つ。どちらも、スローガンだけで、あまり実践されてきていないということだろうか。 |
これが重要な図。技術の占める割合は小さく、設計が重要。 |
上記の図を解説すると左から
- Understand: 状況・環境の理解
- Observe: 観察
- Point of view: 視点(の整理)
- Ideate : さまざまなアイディアだし
- Prototype: プロトタイプシステムの作成
- Test: 試験
技術が必要になるのは、プロトタイプ作成のところだけであり、また、革新的な技術はあまり必要としない。特に、プロトタイプを作ってはじめて得られる知見も多いので、小さく始めることが重要である。例えば、10の町を対象にしたシステムを最初から作るのではなく、1つの町だけを対象に小さく作れということである。とかく、オーバスペックなものから入る日本(の大企業) はこれが不得意に思う。
そして、フィードバックループを回すことが大事である。すなわち製造者みずから設計者である必要があり、設計者が現地に出向いて、現地で仕事をしろということであろう。
最後の件は、かつて:
最後の件は、かつて:
2011年11月12日土曜日: 外注を使うのは日本だけ
にも考察した。昨今日本のIT企業の調子が悪いのも、システムの根幹を占めるようになってきたソフトウェアの開発能力が、(特に大企業において)欧米に比べてきわめて低いことが理由の一つでは無かろうか。
もう一つ重要なのは、現地の大学と共同研究するだけではうまくいかないという指摘である。現地でも大学に来ているのは、上流階層が多く、結局のところ本当の市場の課題が理解できていない。教授たちが発見したのは、大学の学生を通訳に使って、現場の本当の要望を吸い上げることである。とのこと。考えてみれば当たり前のことかもしれない。
これをやらないと、途上国で受け入れられるシステムの開発は難しいように思う。
また政治や地元通信会社との交渉などの社会的な側面が非常に強いとのこと。交渉能力がなければ、成立しえない。
もう一つ重要なのは、現地の大学と共同研究するだけではうまくいかないという指摘である。現地でも大学に来ているのは、上流階層が多く、結局のところ本当の市場の課題が理解できていない。教授たちが発見したのは、大学の学生を通訳に使って、現場の本当の要望を吸い上げることである。とのこと。考えてみれば当たり前のことかもしれない。
これをやらないと、途上国で受け入れられるシステムの開発は難しいように思う。
また政治や地元通信会社との交渉などの社会的な側面が非常に強いとのこと。交渉能力がなければ、成立しえない。
特許システムの開発失敗を省みると)
特許庁の基幹システムはなぜ失敗したのか。元内閣官房GPMO補佐官、萩本順三氏の述懐: http://www.publickey1.jp/blog/12/gpmo.htmlまとめると、
- IT技術の活用をイメージできず盲信している業務モデル
- (フロー)説計の不慣れさ
- プロジェクトマネジメントの問題
- 業務モデルは発注者の理解と覚悟の元作成している間違い
http://www.publickey1.jp/blog/12/it_17.html にも日本のIT業界の問題が指摘されている。
このままでは、Cyber Physical Systemも、絵に描いた餅に終わりかねない。
日本人は大変優れている)
日本の技術者は、以下の点で大変優れている。
- 知識量が多く、技術的に優秀
- 顧客の意見をくみ取る能力が高い。聴く・読む教育ができている
- きわめて勤勉で有り、朝8時から夜22時過ぎまで働く。米国では9時から18時程度。フランスでは、さらに長い昼休みがある。が、ともに外注などつかっていない
が、これで全く世界に通用しないのは、やりかたが悪いにつきる。もっと効率的に利益があがるように、従来の失敗を反省し、やり方を工夫すべきである。
問題点)
問題点)
- 議論ができない。すぐ論点がずれる。議論することを「争いごと」と考えて嫌う:
2012年1月18日水曜日:あるべき議論のやり方
に書いた。 - 反省をしない。成功も失敗も振り返って自分のものにしない。誤りを成功のための打一歩と考えないで、「ぶざまな失敗」だと思い込む
- 均質指向であり、自分たちに対して異質なものを正しく理解できない
2012年3月4日日曜日: 単一文化の危険性
に書いた。