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60万アクセスまでの経過

2009年12月に始めた本blog。2011年7月ごろに10万アクセスを達成し、2011年12月13日には15万アクセスを達成。
その後、私も更新しておらず、アクセスは少し減りましたが、3月1日には18万アクセス。2012/4/18に20万アクセス、2012/8/21に25万アクセス、2013/1/18に30万アクセス、2013/12/17に40万アクセスを達成しました。しばらく見ていなかったら、2015/5/1に50万2584アクセスになっていました。またまた、しばらく更新しないうちに、2017/6/11に60万7197アクセスになっていました。2018/7/7 .. おお七夕 .. には63万0656アクセスになっていました。久しぶりに更新しました。
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2014年9月15日月曜日

Intel の14nmプロセスの期待と課題 - IDF2014から

今回のIDFでは新しい14nmプロセスのcoreアーキテクチャ Broadwellがcore Mとして発表された。Intel のtick時期のコアなので、Haswellの論理をあまりいじらずに14nmにシュリンクしたもの。これの論理だけを刷新するtock期の製品が次に来るSkylakeである。

関連記事: IDF 2014 - 「Skylake」動作デモ公開、Broadwell後継として来年登場 - 基調講演レポート (マイナビニュース 塩田紳二)

Broadwellに関する記事: IDFでIntelが14nmプロセス世代の「Broadwell」を公開 (PCwatch 後藤弘茂のWeekly海外ニュース)

Broadwell 新PCへの期待)
Broadwell (14nm) - 商品名Core M利用の小型PCは、年末商戦にむけて10月から沢山でてくる。特に、小型化が進むことで、displayを取り外したり折りたたんだりするとtabletにもなる2 in 1を主流として売り込むことで、ARM社CPUが支配的なtablet市場にIntelが乗り込もうとしているように思う。

以下、IDF day2 11:00-12:00 Mega Session: PC Reinvention and Innovation
by Kirk Skaugen より

notePC用packageの比較:左が22nm Haswell、右が14nm Broadwell (Core M) 
上: 14nm Broadwellのマザーボード
下: 22nm Haswell利用のマザーボード
これだけ小さくなる
5年ぐらい前のlaptopPCと14nm Broadwell利用の2in1の比較 
2014/10月から各社よりBroadwell利用のnotePC 特に2in1 PCが沢山でてくる。
Lenovoのものは5種類に変化 (Transform??) していた。
Intel Processの課題)
今年1月といわれていて立ちあげがかなり遅れた14nmプロセス技術の詳細は明かされていない。
冒頭であげたBroadwellに関する記事: IDFでIntelが14nmプロセス世代の「Broadwell」を公開に解説があるとおり、Intelの微細化の展望が明るいわけではない。これを以下で紹介する。

22nmから14nmに微細化すると、一辺が1/√2 になるので単純にはchip面積は1/2になる。以下、Intel講演をみてもIntelの14nmプロセスは、(他社と違い)前世代に比べ本当に面積が1/2になることを誇っている。
トランジスタ性能をあげ(電源電圧を落として電力を下げつつ性能を維持し)、リーク(漏れ電流)を減らすなどの工夫をいれても、電力は70% にしかならない。

もともとCMOSにはスケーリング則があり、微細化すると電圧も対応して下げられたので電力密度は上がらず、消費電力が大きく下がり、性能も上がってきた。ところが電圧は無限に下げられるわけでもないし、配線も細さに限界があるので、最近はこれが行き詰まっている。
参考資料: 「スケーリング則の破綻と新材料・プロセスへの期待」

つまりCPUとして同じ電力消費にすると、chip面積あたりの発熱量が0.7/0.5=1.4倍になってしまって放熱しきれなくなる。世の中desktopから小型化に向かっているので、大きなフィンをつけたり、水冷とかは避けたい。

製造コストはチップ面積に比例するので、チップ面積を大きくするためには、値段アップのための顧客価値が必要になる。従来は、これを使いcacheサイズを増やして性能を上げるとか、GPUをつけてグラフィック性能を上げるとかで対応してきた。が、どうもcacheサイズもそろそろ必要十分になりつつある模様。

この証拠にハイパフォーマンス系のXeon は、最近発表した14nm版では12コアから18コアへと増やしたが、cache量やトランジスタ数はさほど増えていない。
18コア版Haswell-Eファミリに隠されたIntel CPU進化のトレンド (同じくPCwatch 後藤弘茂のWeekly海外ニュース)

まとめると、微細化により低電力化しても、に熱密度が上がるジレンマがあるので、cacheなどを巨大化してきたが、それが行き止まれば、CPUは次第にローパワーへと向かわざるを得ない。最近のIntelが、利益率の良いPC用CPUと共食いするのを知りながら、安価なTablet/Mobile向けCPUに向かっている背景には、こういう事情があるのだろう。

IntelもdesktopからnotePCへ薄型のUltrabook、そしてtablet共用の2in1へと向かい、ARMとの大競争が始まるのであろう。

Intelの14nmプロセスの講演)
IDF2014では、プロセスデバイスの研究開発のトップ Mark Borh, Intel Senior Fellowによる14nmプロセスの講演があった。( 基礎技術の発表はIDFでも最近かなり減っている。)
いつものように自信満々で歯切れのよい発表から...

Mark Borh
Markは、2011年にIntel初の3Dトランジスタ Trigate 22nmで強気の発表(以下に記載) をしている。

2011年5月16日月曜日: Intelの立体トランジスタ


Intelの微細化は順調に進んでいる
自分のサイズいりのスケールで22nmの大きさを比較。
笑いをとってツカミはバッチリ

ゲート(青い部分)の容量を減らして性能と電力を稼ぐ為に、
14nm (右)ではフィンを高くしている。このため従来は3 legだった
Trも2 legで済む。

配線層も順調に微細化

SRAMサイズも順調に微細化

微細化を評価するためには、ゲートピッチ x 配線ピッチで
公正に(つまり実際に面積縮小に効く具合で) 比較すべきだという主張

他社は3D化で足踏みがある(説明上インチキをしている)が
Intelは着実に微細化(Gate Pitch x Metal Pitch)している
トランジスタ辺りのコストは着実に下がっている
22nmから14nmになって、各ターゲット向けのどれにおいても
1.6倍ペースで低電力性(or性能)が向上
第5世代Core (Broadwell = Core M ) 第4世代Core (22nm Haswell)に比べ CPUは50%高速、Graphicは40%高速。低電力 TDPを60%削減
Broadwellでは、die sizeは単純計算では0.51倍になるはずだが、
機能増により実際には0.63倍

今年1月といわれていて立ちあげがかなり遅れた14nmプロセス技術の詳細は明かされていないし、自信満々の裏には、前章で述べたような苦しい事情があるのだろう。

調子の良い話とは、実は困った課題を隠そうとしている現れというのが真理なのかもしれない....

2014年9月14日日曜日

Intel Edisonボードを使ってみた


San Franciscoの展示場Moscone Westで2014/9/9-9/11に開催されたIntel Developer Forum 2014 の目玉はIoT(Internet of Things)つまり、インターネットに繋がる極めて様々な装置・端末、ないしは、小型の常時稼働型・超低電力デバイス。

IDF会場 2Fロビー: Edisonを使ったIoTデモのブース
この他にも多数
 
スマホとそれに続くtabletでARM陣営の後塵を拝し、いまIntelは2 in 1 PCなどで挽回を図っている。 それらの先には、話題のApple watch  http://www.apple.com/jp/watch/technology/ やGoogle Glassや、もっと小さなセンサーのデバイスがやってくる。ここではARM以外にArduinoなどの選択肢もあり、まだエコシステムの構築競争が始まったところである。Intelはそこを最初から押さえたいのであろう。Intelの2 in 1 PC/Tablet での狙いについては、以下に書いた。

2014年9月15日月曜日: Intel の14nmプロセスの期待と課題 - IDF2014から

余談) 9/9-9/11という911テロを彷彿される開催時期。というよりも、AppleのiPhone6やiWatchの発表も2014/9/9に行われており、年末商戦とかにも向けて展示会が多い時期で人が移動する時期をテロが狙ったと考えた方がよいのだろう.....
IDFのshow caseの中央でも、組み込み評価ボードEdisonを展示していた)
IDF showcase中央のEdisonブース
Edisonブースに技術情報を聞きにいった所、「面白い評価アイディアを持っている人には、無料で配っている」ということらしく、「あそこのブースでATOMのサーバを展示しているのだが...」と話を切り出したところ評価ボードがもらえた。私の横で話をしていた方は、欧州からの大学の先生らしく、「組み込み系の講義の教材にする」と言ってもらっていた。

調べてみるとamazonでも99ドル http://amzn.to/1BC0myN で売られる予定(2014/9/16リリースだとのこと.. 一般発売前のレア品だったのか... )。

結局おもちゃが3つに増えた)
組み込み評価ボードたち
  1. 左上) 自作PIC (これは16F1827を使った、binary表示時計) - 2ヶ月ほどまえにハンダ付け。PICのプログラムはこれから...
  2. 左下) MicroView - これはArduino。Crowdfundingのkickstartで昨年末注文したものが、2014年8月中旬に届いた。
  3. 右) Intel Edison (これは22nm ATOM silvermont) - IDFでもらってきたもの。
    今回は3について報告する。1, 2についても後日報告したい。
その他拙blogで既報のLinux/Unix 装置は以下のものがある)

iPhoneの脱獄 - これはBSD Unix
 最近のは、2013年12月24日火曜日 : Evasi0n7によりiOS7.x の完全脱獄に成功

2011年8月27日土曜日: MacOSにBSDコマンドを追加し、まとめてファイルをダウンロード

2011年10月23日日曜日: MacでBSDツールを利用する・大学の電子ブック
2011年9月4日日曜日: Nook Touchの脱獄 -- これはLinuxの上にDarvik VMなどを載せた構造のAndroid
2012年12月5日水曜日: Raspberry Pi
2012年12月9日日曜日: Linuxが走っているSDカード: PQI Air Card

2013年1月5日土曜日: 自宅にLinuxサーバを構築した

Edisonについて)
15.5 cm x8.5cm x 4cm の箱に入っている
箱の中から出てくる2つのボード

Edisonは葉書より一回り小さいベースI/Oボードと、SDカードより若干大きいサイズのCPUカード(メザニンボード) からなる。メザニンボードの上の銀色のEdisonパッケージはSDカードよりも若干小さい。

Edisonは、PCwatch記事 「Intel、SilvermontコアのAtomを搭載した新Edisonを公開」 に紹介がある。これによると、PoP(パッケージオンパッケージ)で、CPU上に、1GBのメモリと4GBのフラッシュメモリのストレージが乗せられており、Linux OSで動作しているとある。

IntelのProduct 情報: Intel® Edison Module によると100MHz動作の32bit組み込みx86 CPU QuarkやBluetoothも乗っているらしい。microSDカードのポートも有る。至れり尽くせり...
だが、RaspberryPIとは違って、HDMIとかVideo出力はない。

https://communities.intel.com/docs/DOC-23161 からdownloadできるpdfのボードマニュアルをみると、スイッチングDCコンがボードに搭載されており、外部電源を選択すれば7-17Vの外部DC入力で動く模様。
また、バッテリー動作も想定されており、Li-Ion電池を接続するポートもあり、バッテリーチャージャ機能も内蔵されている模様。以下、Li-Ionの件は出ていないが、上記リンクのpdfから抜粋したボードのブロック図。

Edisonボードブロック図
Sparkfunのボード)
Arduinoと周辺ボードの会社Sparkfunから、このEdisonCPUカードを含む、IoT開発用の小型のカードキットが売られている。https://www.sparkfun.com/products/13093

ここにある紹介videoを以下に掲載する。


基本機能だけの以下のsetで115ドルらしいが、他にもボードがあり各種IoTデバイスが作れそう。たとえば、Microviewと同じdisplay+sw+ジョイスティックのボードとか、3軸加速度計+3軸ジャイロ+磁気コンパスのチップ入りボードとかがある。

Intel® Edison Starter Pack: $114.95
Intel® Edison Sensor Pack: $69.95
動かしてみた)
箱の裏に、"maker.intel.com"とある。これを入れると、EdisoとGalireoのサイト: Intel Makers: What Will You Make? に行く。

ここのEdison のリンクをクリックすると http://www.intel.com/content/www/us/en/do-it-yourself/edison.html つまり、先に示したリンク Intel® Edison Module  に行く。

Edison Getting Started Guide - Mac を参照しつつ、Macを母艦にしてEdisonを動かしてみた。まず、上記に紹介があるように、ボードを組み立てて、Edison用のArduino SDKをダウンロードする(これはJavaで動いている)。microView用のがver1.5.7で、Edison用のがver1.5.3なので、それぞれArduinoMicroview.app, ArduinoEdison.appと名前を変えて/Applicationsにおいた。(work arewの設定を変えていないので、ファイルを共有しているらしく、Edison用を起動すると、microviewライブラリが無いとエラーになるので今後対応する)
microUSBを接続
まずmicroUSBを接続)microUSB側を使うには、その上にある小さなスイッチをmicroUSB側に倒す必要がある。通常USBを使うと電源アダプタが必要になる模様。

写真上側のmicroUSBは電源供給(ないしは、targetデバイス向けなのかもしれないが..)
下側のmicroUSBが通信用であり、ともにPCに接続する。

シリアルデバイス)
上側のmicroUSBを接続しただけでは/dev/cu.*は何も変わらないが、下側のmicroUSBを接続すると、以下の3つのデバイスができた。
  • /dev/cu.usbmodem1421241
  • /dev/cu.usbmodem1421243
  • /dev/cu.usbserial-A703ZBFN
ArduinoのSDKアプリを起動して設定)
冒頭の Edison Getting Started Guide - Mac にあるように、BoardをEdisonに(もともとそうなっていたが)して、Serial Portをリストの一番最後の /dev/cu.usbserial-A703ZBFN に設定して、uploadをかける。コンパイルは成功するものの、uploadを数度試して失敗する。



Arduino Intel - SDK画面
upload 失敗でtimeout

端末画面からlogin)
uploadしなくてもlinuxが立ち上がっているはずなので、ガイドに従い、terminalからloginを試した。
上記のdevice名を用いて、Macのterminalから以下の様に打つ。($の前はプロンプト)
Satoshi-MacBA:~$ screen /dev/cu.usbserial-A703ZBFN 115200 -L
すると、login画面が表示される。
ガイドにあるようにuser名は、rootでパスワードはそのままreturn (パスワードなし) でloginできた。

最初に電源を入れた後、そのまま引っこ抜いたので、ファイルが壊れていて、fsckが走って、file systemを修復していた。linuxなのでshutdown処理は必須。

WiFiを有効化)
root@edison:~# configure_edison --setup
(#の前はプロンプト)を、やってみるとsetupオプションが変わっていて、インタラクティブには設定できない。エラーメッセージにある、ヘルプを参考に以下のコマンドでwifiを設定。WEP, WPA2-Personal, WPA2-Enterprizeが選択でき、SSIDステルスにも対応している。
root@edison:~# configure_edison -w

WiFiを設定するとsshでつながった。sshして、
  • root@edison:~# uname -a
  • root@edison:~# cat /proc/version
  • root@edison:~# cat /proc/cpuinfo
をやったのが以下画面。結果をまとめると、順に
  • OS名はLinux edison 3.10.17-poky-edison
  • 同じくOS名だが GCC4.8.2でコンパイルされ、SMP(Symetricマルチコア並列処理)が有効化されている
  • プロセッサ情報)
sshでwifi経由でEdisonに接続

最後のprocessor情報をみると2 core のsilivermot 500MHz が乗っていた。bogo mips は998.4 -- BogoMips ではマルチコア分も積算されている模様) つまりSDカード大きさで1000 MIPS。

DRAM 1GB, ストレージ4GB... 私が大学院の頃は巨大で何千万円もしたVAX11 780が1MIPSだったので....隔世の感がある。

shutdown)
root@edison:~# shutdown -h now

を実行。ssh接続は速攻で切れて、Macのscreenコマンドで繋いでいたシリアルコンソールでは、以下の画面がでる。
shutdown時のコンソール画面
CPUは無事haltして、ベース基板のLEDも消える。
が、screenで繋いでいるコンソールのUSBデバイスが「USB接続が不正に切り離されました」とエラーをだすので若干気持ち悪い。

おまけMicroviewとの関係)
MicroviewはSparkfun https://www.sparkfun.com/と言う会社が製造販売している。
Sparkfunのロゴ


Microviewを立ち上げると、上記の会社のロゴにある炎のマークが表示される。
Microviewのサイト: http://learn.microview.io/

IDF showcase中央のEdisonブースでは、この会社が展示していて、この炎のマークがあったのでピンと来た。説明員に「kickstarterで買ったmicroviewが最近やって来たけれど、あれって良いよね」と言ったら、この説明員がmicroview SDKの一部を担当したらしく、彼も嬉しそうで話しが弾んだ。

前述のようにEdisonでも、I/OボードではSparkfunが大量にArduino用に作成している周辺デバイスに対応していると思われ、Arduinoの SDK、I/Oライブラリを使って開発を容易化しているのだろう。IntelもArduino向けI/Oボードの品揃えが豊富なSparkfunと組むの有効だと考えたのだろう。

組み込みとかIoT、いやサーバの部門でも、ソフトやらSDKの共用化は進んでいる。開発が大変だし、使う側での勉強する手間も省ける効能もある。エコシステムとかオープン化といわれる潮流である。

一つ使って環境を知っておけば、IoT業界で話が弾むきっかけになるかもしれない。

2012年11月8日木曜日

半導体微細化の力 - Intelのすごさ

半導体製造技術では、Intelが2位のTSMCやGlobal Semiconductorなどを大きく引き離してしまった。これらには以下の技術がある。追って解説とリンクを追加する。

  1. Tri Gate Trによる、3次元のFDトランジスタの技術
  2. 低電力回路技術
    1. Near Thresholdの回路技術と、それを実現するLSI設計技術、製造管理(LSIキャラクタライズ)技術
    2. Onchip のスイッチングレギュレータの回路と、オンチップの高いQ値を持つインダクタ製造技術(材料技術)
  3. Copy Exactlyなどをはじめとする、生産管理技術。ラインの垂直立ち上げノウハウ
生産能力)
近々、14nmの450mmウエハの生産ラインを導入する可能性もある。
以下に計算したが、歩留まり(良品率)90%の仮定で、月100万個生産するとき、

90nmで10mm角のチップだとすると、200mmウェハの90nmプロセスでは、ウェハを7,077枚流す必要があった。2007年ごろの初期のiPhone向けのSoCなら、この程度の大きさだったであろう。http://toucharcade.com/?p=192 には2007年発売の初代iPhone http://bit.ly/SvqvYd のCPUがSamsungの420MHz動作のARM1176JZ-Sであったと書かれており、代表的なプロセスとして130nmプロセスでの性能があげられている。当時は、まだ、AxのようなSoCではなく、CPUは別chipだったようである。

ところが、これを450mmウエハの14nmプロセスでつくると、ウエハ枚数はたったの34枚で終わり。




ある程度大きな半導体工場では、月産1万枚以上のウェハを流せるので、チップとして考えると相当な生産能力になる。

ちなみに、Apple史上最大の売り上げと言われる、iPad miniは一週間に300万台売り上げた。つまり、90nmで10mm角のチップが各iPad miniに一つ入っていたとしても、14nmの450mmウェハなら、100枚ちょっと流せば所要が実現してしまう。もしチップサイズがこの程度のものだとすれば、iPad miniの初期の売り上げが100週間=25ヶ月=2年つづいても、そのチップを作るのに、工場を1ヶ月フル稼働すればよいことになる。別な言い方をすると、この工場の生産能力を埋めるには、iPad miniの初期の売り上げを維持し続ける製品が25製品必要だということになる。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1208/03/news028.html に、2012年の4-6月 四半期の各社のtabletの売り上げが出ている。以下に引用する。

首位のAppleで、四半期に1,700万台。2位のSamsungで239万台である。一位のAppleでも、月にならすと、月566万台。仮に先ほどのSoCチップの計算だとすると、14nmの450mmウェハにして、ウェハが月192枚になる。工場はとても埋まらない。2位以下全部会わせた2,500万台と考えても、まだまだ足らない。SoCチップが複雑で大きくなることに期待するか、需要が増えることに期待しないとならない。

しかし、世界シェア1%もない日本のメーカが世界シェア68%越えのAppleと戦うのは、コストや設計投資的には圧倒的に不利だと思う。月産100万台あっても、強い技術を持つ、大手半導体Fabから有利な条件を引き出すのは難しいであろう。技術優位などで、勝算が相当あるのでなければ、手を出しても負けるだけのように思う。

日本の半導体撤退の理由)
日本の多くの半導体会社で、Flashメモリという売れ筋を持つ東芝以外は、2000年過ぎの65nm世代の頃から最先端半導体の設備投資を諦めはじめたのは、ラインが埋まる製品のメドが立たないという理由がある。これが、解決しなければ、いくら公金を投入しようが日本の半導体製造業は復活のしようがない。昔の半導体メーカが設計の方向に走る理由がここにある。

固定費と変動費)
半導体の設計投資、設備投資、ウエハ一枚の材料費を後ほど比較してみたいが、材料費や製造変動費の占める割合は極めて小さい。出版とかと同じく、完全な設備産業である。

進歩した半導体技術を持つ工場が、生産コストも下がり、生産能力も高くなり、世界を席巻してしまう。

2012年9月22日土曜日

資金援助はどうあるべき? - ルネサス支援から

以下のような記事があったので、すこし掘り下げてみた。

「日の丸半導体」を堅持、ルネサス支援、異例の大連合、高コスト体質残る恐れ。 
2012/09/22 日本経済新聞 朝刊 2面 
 トヨタ自動車やパナソニックなど日本を代表する製造業が経営不振のルネサスエレクトロニクスに出資する方向で調整に入った。かつて世界を席巻した日本の半導体産業の中で残った数少ない企業を官民で支えようという動きだ。しかし顧客企業のニーズにこたえ、生産品目を増やしてきたことで高コスト体質に陥り、ルネサスは経営体力を奪われた経緯がある。大口ユーザーが株主に就くことで、経営再建が進まないリスクもある。(1面参照)東日本大震災でルネサスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災した。操業停止でトヨタのほか日産自動車やホンダなど国内自動車メーカーの生産が一斉に止まった。燃費や走行性能を左右するエンジンユニットなどに組み込むマイコンの供給元が失われたためだ。各社はルネサス1社に依存していた反省から調達の分散化を進めているが、ルネサスだけに蓄積している技術やノウハウが多い。「一朝一夕に調達の分散化はできない」(国内大手幹部)かつて日本勢は半導体で世界を席巻。1980年代後半の世界シェアは8割に達した。しかし韓国や台湾勢の猛追で競争力を失い、再編や淘汰を強いられている。自動車や家電製品などの性能を左右する半導体をつくる日本勢はルネサスにほぼ限られた。官民による買収は「最後のとりで」を守ろうという動きだ。 しかし大口ユーザーによる支援は課題がある。自動車用マイコンで世界シェアトップでありながらルネサスは利益が上がらない体質に陥った。原因の一つは「各社が特注品を発注し、厳しい値下げ要請をしたため」(大手証券アナリスト)だ。米大手投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)がルネサスの経営権を握った場合、経営改善策として量産効果の見込める半導体の生産に特化する可能性がある。一方、大口ユーザーによる支援は経営不振の原因が残ったままになりかねない。マイコン以外にも高張力鋼板(ハイテン)や炭素繊維など、日本には世界で最先端の部材・素材を手掛けるメーカーは多い。こうした裾野の技術力が自動車や電機などの競争力を支えてきた。各分野で韓国勢や中国勢が実力を高めているのは、国内の部材・部品メーカーの買収や、へッドハンティングによる面もある。異例の企業連合によるルネサス支援は、技術流出に歯止めをかける試金石にもなる。
ルネサス官民で買収、革新機構・トヨタ・パナソニックなど、年内1000億円超出資。
2012/09/22 日本経済新聞 朝刊 1面。
 業績不振の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなど日本の製造業を代表する企業が、政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資する方向で調整に入った。すでに交渉中の米投資ファンドへの対抗案をつくり、年内に過半数の株式取得を目指す。ルネサスは車や家電を制御するマイコンで世界首位。基幹部品の安定調達に向け、官民挙げて異例の支援体制を組む。(関連記事2面に)出資企業としては日産自動車やホンダ、キヤノン、ファナックなどの名前が挙がっている。自動車部品メーカーではトヨタ系のデンソー、ホンダ系のケーヒンのほか、世界大手の独ボッシュなど海外勢にも出資を求めている。第三者割当増資などにより、産業革新機構と合わせて1000億円超を出資し、ルネサスを共同買収する方針だ。現在、革新機構が中心になって出資案を策定中。10月中にもルネサス株主のNEC、日立製作所、三菱電機の3社や、三菱東京UFJ銀行、みずほコーポレート銀行など主力取引行に正式提案する見通し。マイコンは車や家電製品、産業機械などに多く使われ、モーターなどの動きをきめ細かく制御するなど頭脳の役割を果たす。ルネサス製は長期間使っても性能が劣化せず、最先端品は他メーカーでの代替が難しい。
 ルネサスの再建策をめぐっては、米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が8月末、ルネサスへ約1000億円を出資する案を示した。
ただKKRが大胆な事業再編などに踏み切った場合、マイコンの安定調達に支障をきたす恐れもある。部品調達網の安定強化を目指すうえで、官民一体の支援の枠組みが必要と判断した。
ルネサスはデジタル家電などに搭載する高機能半導体のシステムLSI(大規模集積回路)が不振で、7期連続で赤字となっている。2013年3月期も1500億円の最終赤字を見込む。このため約5500人の早期退職募集や、国内19工場を売却・閉鎖により半減させる大規模なリストラに取り組んでいる。システムLSIは富士通、パナソニックと事業統合に向け交渉中だ。
株主の電機3社と主力取引行による約1000億円の融資でリストラ費用は手当てしたが、巨額損失の計上で自己資本が急減。債務超過となるのを避けるため、自己資本を手厚くする必要に迫られている。
金融機関はKKRによる支援をいったんは受け入れる方向だった。だが中長期的にみて国内製造業の競争力強化につながる今回の出資提案が望ましいと考えているもようだ。KKRはルネサス取締役の総退陣を求めているとされる。出資する条件として、金融機関や株主に追加融資などを要請していることも、KKRの支援を受け入れにくくしている。
ルネサスエレクトロニクス 日立製作所、三菱電機、NECのシステムLSI事業を統合して、2010年4月に発足した。自動車用マイコンでは世界シェアが約4割。12年3月期の連結売上高は前の期比22%減の8831億円、最終損益は626億円の赤字。3月末時点の従業員は4万2800人。
これを読んで最初に感じた疑問)
  1.  不振の原因を究明しないまま、資金援助しても、穴の開いたバケツに水を注ぐのと同じで、全くムダになると思います。
  2. 何度も資金援助を受け、日立と三菱が合併しルネサステクノロジになり、経営悪化して、それにNECエレが合流して、鳴り物入りでルネサスエレクトロニクスになっても改善していません。今回は、どう変わるのでしょうか。。
  3. 無いと困るから資金注入では、また、赤字になりそうです。挽回のメドがたったから、その資金を入れるのでないと。。。
  4. リストラをするのは、事業集中をして、戦略商品にかけるためであり、KKRが経営権を握るというのは単にルネを切り売りするつもりというより、経営改善をしようとしているのかもしれないのですが、それを避けて、経営陣温存のまま資金援助することが、どういう意味になるのか。。
分析)
対策としては、ちゃんとしたマーケッティング部門を作る必要があるでしょうね。そして、言いなりにならず提案型の商品作りをしなければ、価格はコントロールできないように思います。

大体、自分達がその商品の価値を知らなければ、値段は叩かれるだけでしょう。

今のルネサスのSoC(LSI) で、いいなりにならない製品がどれで、価格競争に陥る製品がどれだと言い切れる人は、ルネサスの中に何人いるのでしょうか。

一例) 
ルネサスエレクトロニクス)  ARM, MIPS, SH, Vシリーズ、RX、RL、78K など沢山あるマイコン。http://bit.ly/OP0iSd で、検索すると4600品種もでてきます。
組み合わせだとして、設計は多少減るでしょうが、それでは、半導体ラインの大量生産性のうまみは出ません。

Intel)一方、スマホ・タブレットが追い上げてきて、すこし焦ってはいるようなものの、今だ世界最大の生産規模と売り上げを誇るIntel。

http://intel.ly/OP0BfS によれば、Laptop, Desktop, Serverで、各6品種。多分その中の多くは、同じdieをボンディングオプションかfuseで切り替えているので、chip自体は全CPUで4品種もないと思います。

半導体というのはそうやってやる商売だと思います。元intelの方からも良くそういう話を聞きます。技術者は、言われたものを作ることができるが、どうやったら儲けを上げられるを考えるのは、一般的に非常に不得意だと。。

また、半導体ではなくIT分野で、調子の良いAppleと調子の悪いHP, パナソニックを比べると、調子の良いAppleは製品数が非常に少ないです。(以下に書きました) それだけ、オーバヘッドも少なく、大きな利益が上がると思います。ベンチャーは製品が少ないですが、大企業でも、自社が得意な分野を絞り込んで、少品種大量生産の時代だと思います。どの企業をみても金太郎あめ、オールマイティな大企業でよいのでしょうか。。

2011年11月13日日曜日:Appleの製品数はとても少ない


YKKの戦略もとても参考になります。これは以下の投稿の3番目に書きました。

2012年4月29日日曜日:  Asahi Web Ronzaの注目記事3本など。


Intelとルネサスの売り上げの比較)
http://bit.ly/SLjAci から表を引用します。ルネサスは世界7位です。ただし、Global Foundaryが、Nvidia, AMD,Qualcomというように分割されているので、これをファウンダリ(工場)で集積すると、順位が若干変わると思います。

弱いと言われる日本の半導体が上位6,7位に入っているのは、まだ捨てたモノではないと思いますが、一時あれだけ弱体化した、米国が、トップの多くを占めるまで回復したのには驚きます。


自動車会社が株主になる懸念)
国内企業が救済すると喜んでばかりいられないように思えます。

プリウスは200個以上もECU(プロセッサLSI)が搭載されているようです。その多くを無機能で安いASICにするなりして、品種と個数を減らす提案して、価値を中央の賢いECU(CPU)に集中して、中心的なECUの付加価値をあげるとか、頭を使うべきだと思います。
信頼度で金を取ろうとしても、相手のサイフは限られています。

ただし、集中≒製品機能集約・共通化、となると、今回の自動車業界とかの救済は最悪の一手に属する可能性があります。カスタマイズを要求し続ける顧客がご主人様になってしまいます。

まるでガラパゴス携帯が生まれたのを彷彿します。通信キャリア様がご主人様になり、端末メーカーに独自仕様を要求し、世界に売れない独自仕様・多品種・毎度専用設計の構図をつくりだしました。いつか来た道、ガラパゴスチップの出来上がりになりかねません。

マネージメント)
ちゃんとしたマネージメントでないと、仕事をしていない人を減らすことができるかどうか。。品種が多いまま、人を減らすと、仕事がきつくなるだけです。

本来あるべきマネージメントは、以下に書いたようなものなのではないのでしょうか。。

2012年9月6日木曜日: ピーターの法則



2012年1月15日日曜日

IntelとARMの戦いの予想: Intel TriGate Trのすごさ

日本もちょっと前は凄かった)
以下、少々難しい技術論に入るまえに。。。

今、Intelが恐ろしく素晴らしいが、実は2000年頃のIntelは、CMPという平坦化も満足にできないほど、半導体技術が後れていた。
当時の半導体技術のトップは、銅配線を導入したIBMと、それに対しても、いち早く追いついたNECであった。当時のNECは秀逸であった、どんな革新技術にも即座に追いつく。相当優秀な技術者が大勢いたのであろう。

日本がDRAM技術でのトップを韓国に明け渡したのが1990年ごろ。それから10年したあとでも、日本の半導体技術はまだ世界トップに君臨していた。

2012年1月、現在、NECはリストラ等、業績低迷で話題になっているが、1990年頃台の半導体生産世界トップであった。1995年頃には、それを他社に明け渡した。それでも2000年までは、世界トップの半導体技術を維持していた。
2000年までいたトップレベルの技術者が実力を発揮できていれば、昨今のリストラ等の迷走には陥らなかったのではなかろうか。

なんでこんなに迷走したのか、本人達も理由が分かっていないのであろう。それが一番の迷走の理由だろう。


LSIの動作周波数と消費電力の関係)

にあるように、CMOS LSIの消費電力は、以下の式の初項から、1) 容量の充放電(計算によって生じる電力)、2) 貫通電流(CMOSの作り上生じる電力)、3) リーク(トランジスタの漏れ電流 - 動いていなくても消費される電力) で示される。以下 Vは電源電圧。V^2はV電圧の2乗を示す。Nはスイッチング率、fは周波数。Cは容量(自分自身のトランジスタと配線の容量、ドライブする相手のゲート容量などの総和)。ILはリーク電流。Qは蓄えられた電力になる。

Power = 1/2 CV^2N + QVfN + IL V

1周期で、充電と放電をくりかえし、充放電の際にトランジスタが抵抗で発熱するので、充電でも発熱し、放電でも発熱する。すなわちNは周波数fの2倍になり、第1項が、よく見かけるP=CV^2f の式になる。

この原理を以下では、積分を使わず簡単に説明している: http://www.moge.org/okabe/temp/circuit/node24.html

今は、Domino(バタバタ倒れる、ドミノ倒しのような高速回路の作り方)やPass Tr論理(電力を食い、遅延を食う縦積みトランジスタによる増幅回路を極力減らす方法。配置設計を緻密にやらないとならず、設計に手間も掛かる。) をやめてまたオードドックスなCMOSに戻っている。微細化でリークが増えたり、電源電圧がきわめて下がってきていて、CMOSしか使えないなどが理由。

Intelが今回開発し、近々製品化するIvy Bridgeや新ATOMでつかう22nmプロセスすなわちTri Gate Trは、3) リークが少なく、2) Vg-Ids特性が急峻であり、貫通電流が小さい特徴がある。Vgはゲート電圧、Idsはドレインソース電流というトランジスタの駆動能力つまり性能になる。(特徴1)

Trigate Trについては、

2011年5月16日月曜日: Intelの立体トランジスタ

に書いた。 以下にIntel FellowのMarkのvideoを埋め込んだのでクリックすれば動く。


また、PCwatch後藤弘茂さんの記事はいつも正確で分かりやすい: http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20110915_477478.html

なぜ立体トランジスタにするのか)
大きく2つの要因がある。
  1. 微細化すると量子効果があらわれ、トランジスタが完全にoffできなくなり機能しなくなる。パンチスルーなど。これを防ぐために、両側から電流を制御するダブルゲート、Tri Gateなどが必要である。- これはキッチリonにする技術といえるだろうか。
  2. 従来の拡散を使ったトランジスタの性能を上げるために、SOIという手法があった。これはPD (部分Depletion 型)と呼ばれる。微細化した3次元トランジスタでは、これよりも特性の良いFD(完全Depletion型)が使える。- これはキッチリoffにする技術といえるだろうか。
http://bit.ly/JFz1F1 に分かりやすい資料がある。従来トランジスタを高性能化してきた、スケーリング則なども説明されている。
ここから上記1のダブルゲートの効果をしめした図を以下に引用する。青っぽいほうがoffが強く、赤っぽい方がonが強い。




量子効果による、パンチスルーが10nmぐらいになると、もはや看過できなくなり、Ion/Ioffの比率が稼げなくなり、Trとして機能しなくなる。その時代には、FD型のFin Trが必然といわれていたが、Intelは、なんと22nmでこれを投入してきた。

これは、製造の問題があり、難しいと思われていた。半導体プロセスは厚さ方向は、CVDなどで原子単位で積み上げ制御できて高精度につくれるが、平面方向は複数マスクを用いた露光(多色刷り版画みたいなもの)とエッチングなので加工精度が下がる。3D化は、その加工精度の低い方向にしわ寄せを及ぼす、大変難しい技術である。が、堆積やエッチングなど、厚さ方向の技術を上手く用いて、精度は向上させてきているのだろう。


元の消費電力の議論にもどると)
3)のリークの増大が微細化で問題になっているが、通常、高速動作で電力を支配するのは1)の充放電電流である。

CMOSはフルスイングするので、冒頭に書いたとおり1回のクロックサイクルでCが完全に充放電され、Cにたまった電荷のエネルギーと同じ分のエネルギーが、トランジスタで発熱し全部熱になる。なので、振幅を小さくする論理などが、検討されたりしてきた。

今は、微細化でリーク 3)の項も影響が大きいので、電源電圧自体を落とすのが主流である。回路技術の流行は、半導体の進化でどんどん変わる。
特徴1)に書いたようにVgs-Ids特性が急峻なTriGate Trは、電源電圧を落とす点でも有利だと思う。

周波数を上げるには、容量Cの充放電を速めないとならない。充電電流であるIon (トランジスタがOnになっているときのIds) を大きくする必要がある。Ionは電圧の関数である。

ここで、Q=CV=IT (Tは時間) なので、V=Ion * T / C すなわち充放電時間を縮めるには、Cを下げるかIをあげる必要がある。IntelのTri GateはCを下げる効果、ならびに同じVdsに対してIonが増える効果がある。ともに高速化に効く。
なにしろチャネルを3次元的にゲートが取り巻いているので、直感的に考えても、体積=容量をふやさず、実効的なチャネル=電流を上げられると理解できる。(特徴2)

以下では、Ionを、Ids (drain-source電流)と呼んでいる。


FETは定電流特性があるので、Vdsを十分あげれば、飽和領域になりIonはVgsだけの関数になるのだが、現在のように電源電圧を下げていくと、おそらく実際には不飽和域に近いところでつかわざるを得ない。
するとIonはVdsに比例してくる。
(上記、-1/2Vds^2 の項は一定のリークカレントみたいなので、とりあえずおいておく。)

これらを総合すると、Fをあげるためには、Vを比例してあげないとならないことがわかる。ざっくりというと、FもVの関数なので電力は、電源電圧Vの3乗に比例すると考えられる。-- 次の章で使うのでココだけでも覚えておいてください。

これが、DVFS : Dynamic Voltage Frequency Scaling - 動作周波数も変えつつ電圧も変えて低電力化する基本原理である。
2003年頃だろうか、微細化が進み電源電圧Vddがスレシホールド電圧Vtに近づいたので、DVFSは役に立たないという説明が日本でされた。今も信じている方が多いと思う。

先のPCwatchの記事からグラフを引用しておく。Y軸、ゲートディレイがトランジスタで作った論理素子の応答時間つまり値が小さいほど高速に動作することになる。


これを活用したのが、後述するIntelのNear threshold回路である。一番最初のPentiumで試作し、40MHz動作くらいなら、2cm各の太陽電池のそれも、電灯の明かり程度の数mWで動き、電圧を上げると、そのままフルスピードになれるらしいのである。もはや、面倒な、レジスタ待避とかなくても、いちおう動作したまま、CPUは待機状態なみの低消費電力に、入れるのかもしれない。
日本の低消費電力の研究者の方が、考え方が変わったと行っておられた。

上記、特徴1, 特徴2に書いたように、Intelが新開発したTriGateトランジスタは、低電力になるための素質をいろいろ備えている。Intelに限らず、3Dトランジスタ、ないしは、FD (Full Depletion : 完全空乏型)といわれるトランジスタが未来のトランジスタと呼ばれていた理由である。その夢のトランジスタをIntelは22nmで来年にも、主力CPUに商用搭載してくるのである。この発表を聞き、デバイス関係の専門家が、信じられないと大騒ぎしたのである。

Intel 対 ARMの戦い)

この2月にサンフランシスコで開催される、
ISSCC2012国際固体素子学会という、世界で最も権威ある学会で、Ivy Bridgeは発表される。日本の有名な先生方もこの学会の運営に非常に貢献されており、心強い限りである。
ISSCCプレビュー (日本語) : http://eetimes.jp/ee/articles/1111/21/news084.html

ここで、Intel のIvy Bridge:http://bit.ly/zsxvhk や、新ATOMが発表される。
22nmプロセスの概要は上記リンクにあったように夏のIDF2011などで解説済み。

同時に発表される22nmのIA-32コア 多分新ATOMのコア。なので、これは1 coreのチップだと思う。これは、915MHz動作時に737mW。

対するARM cortex-A7は、1コアあたり250mW。Nvidea Tegraは2コア1GHz 500mW http://engt.co/A8SV0w 

が、組み込み世界では、周波数にコア数を書けるのが普通らしいので、Tegraは、500MHz x 2コア。(この表記とてもインチキ臭いですが。。)

性能は命令の同時発行数にも比例するが、ATOMは2命令のIn order同時発行、ARM Cortex A9はOut of orderの2命令同時発行。この点からみると、一命令がこなす処理がIntelの方が多いのに対して、ARMはOut of orderと別の性能向上を持っているので、周波数に対する性能はほぼ互角と、丸めることにする。


すると性能は:

Intel 22nm ATOM:  915MHz 1コア 最大消費電力 737mW
ARM 40nm Tegra: 500MHz 2コア   最大消費電力 500mW

となります。製品時期は同時期でしょうから、Intelの方が半導体が2世代くらい進んでいるのがわかる。1世代は1/√2 なので、40nmの次が、32nm、そのつぎが20nmになる。

ここで注目すべきは、IntelがARMの2倍のクロックなのに、電力が1.5倍も行っていないことと。前章で書いたとおり、速度を上げるには動作電圧を上げないとならず、これによって、電力は速度の3乗で増えかねないのに、Intelは速度が2倍になっても電力が1.5倍にしか増えていない。これが、Intelの半導体技術の底力だと思う。

所詮アーキテクチャの差による電力差は小さい。Crusoeを作ったTransmetaが、Intelの超低電圧動作Pentium-Mに蹴散らされたのでもわかる。

マルチコアは難しい)
クロック掛けるコア数がほぼ同じなので達成される性能はほぼ同じでだろが、のろい2つで実行するARMよりは、速い一人が実効するIntelの方が瞬発力があるのは容易に想像できる。

つまり2個別々のプログラムの同時動作ならARMで速くなるが、一つの仕事だけを速くするには仕事をうまく並列に処理するプログラム改造が必要なのが、Tegraである。

実はこれは結構大変で、仕事の分割損もでる。いわゆるマルチスレッド化だが、大変なので、世の中では、一つのソフトの中がマルチスレッド化されたソフトは、PhotoshopとかVideo編集とか、かなり性能が必要なアプリに、まだまだかなり限られている。iOSのiアプリが使うObjective-Cもマルチスレッド対応はしているが、どれだけこの機能が生かされるようになっているのか、今後調査してみる。iOSは、基本シングルタスクなので、どこまでマルチコアが生かせるのか。

所詮、端末で携帯同時に動くプロセス数は少ない。それもあってiPad2では搭載メモリをけちっているように思う。2011夏には、1Gbit のDRAM chipが30セント程度だったので、1GBでも2.4ドル。200円程度。大したコストダウンにもならないにも関わらずである。

ともあれ、CPU x 周波数のピーク周波数では、Tegraの方が上だが、分割損と並列プログラムの問題があるので、実際は700MHz動作くらいのIntelコアの方が快適かもしれない。500MHz x 2 vs. 700MHz x 1で比べるなら、消費電力はIntelのほうが小さくなる可能性すらあうる。

SRAM技術)
Cacheとして使うonchipのSRAMに関してもIntelはすばらしい技術を持っている。
なにせ、IBMがPower8でDRAMでようやっと32MBのL3を作り込んだのに、Intel Neharemでは、同じプロセス技術のSRAMで24MBを作り込んできた。

さらには、回路技術もある)
Intelは、Near Threashold Logicという技術がある。2011夏のIDF (Intel Developer Forum)では、初代Pentiumを40MHz位にクロックをおとして、2cm角くらいの太陽電池で動作させていた。数mWクラスの消費電力である。


この記事を書かれている後藤弘茂さんとは、Hot Chips23とか、IDF2012でお会いして立ち話をしました。
「Intelのプロセス、回路技術は本当に凄いねぇ。ある意味、プロセスと回路しか強みがないから、そこを徹底的に強化するのでしょうね。逆に日本メーカは、ソフトとか、アーキテクチャとかいろいろ強みを持つから、逆に器用貧乏になるのかもねぇ。」と、お互い納得してきました。

この技術が凄いのは、電圧を上げた途端に、通常の速度に戻ることである。データの待避もなにもいらない。自由に速度を換え、待機に入れるのである。ノートPC, スマホ、タブレットの電池の持ちと使い勝手が圧倒的に向上することが期待される。

この技術もARMには存在しない。

ARMの主張)
ところが、ARMは、Intelは電力を食うんだと、いまだに主張している。
それも全く定量的なデータなしで主張するARMと、定量的なデータをもって主張するIntel。なので、私はARMに対してかなり疑心暗鬼になっている。

あまりしっかりはよんでいませんが。
ARM CEO: Intel will never be the leader in silicon power efficiency
とか。

どうなるか今後のIntel対ARMの戦い。デバイス、製造、回路、ならびにそのトレンドをしっかり押さえている点で、Intelは優位。多くの半導体メーカを巻き込んでいるのがARMの強み。烏合の衆にならないように、力を引き出せばARMにも勝ち目がある。ARMには、Open Sourceのように、共同作業やOpenの強みを出していく方法もあろう。