ジオメトリだけで語れないと言われるように、サスペンションは奧が深い。また、ボディ剛性によっても、サスペンションの挙動は大きく変わる。サスペンションの専門家の多くは、ジオメトリよりもボディ剛性等が大事であるし、数値計測だけではチューニングしきれないといっている。
サスペンションの奧の深さについては以下でも言及した)
2011年12月4日日曜日: サスペンションの奥の深さ - ジオメトリについて
トーションビームには以下のような利点が存在する。これらが、Cセグメント以下のほぼ全FF車が後輪にトーションビームを採用する理由らしい。
Motor Fan illustrated vol.58 「ザ・サスペンション」p.40から、Torsionbeam Axleの図を引用し解説する。
- トーションビームアクスルは、セミリジッドといわれがちだが、ビームのねじれ量が大きく、左右のトレーリングリンクの動きは、独立懸架に近いと言われる。トーションビームが支点であるブッシュに近いので、テコの原理でねじれやすく、むしろアンチロールバーとして機能するのであろう
- Leafや現行Prius のようにブッシュを斜め配置して、ブッシュの軸方向のたわみ量を最適化すると、旋回時の横Gにより、旋回方向に後輪が向く。現行プリウス ZVW30のリアサスペンションのブッシュも、ブッシュの軸に平行方向には柔らかく、直角方向には堅く作ってあるらしい。
すなわちトーインを安定方向に向ける後輪操舵の効果が得られる。上記図面で、ボディは遠心力により旋回方向外側、すなわち左に動こうとする。するとタイヤは右向きの反力をうけ、これによりブッシュが右にたわみ、トーションビームが若干時計回りに回転し、安定方向に後輪が若干動くということである。ブッシュが、円周方向に斜めに配置されているおかげである。ブッシュの軸の配置角度と、堅さの調整で、後輪操舵の具合が調整できると思われる。また、ブッシュの斜め配置もあって、左右輪は車高方向には連動して動きにくいと思う。これが、独立懸架らしさを高めているとも思える - 構造上ロール剛性が高く、部品点数が少ないうえに、トレーリングリンクはプレスで組みたてられるので、コスト的にも有利。トランクなど後輪上のスペースの確保にも有効
- トーションビームをブッシュの支点に近づけることで、てこの原理により、バネ下重量増大の影響も減らせるように思う。(私の独断)
フロントサスペンションに関しては以下でも説明した)