「ジョブズ・ウェイ」著者に聞く:「何よりも大事なことは情熱」――ジョブズ氏の師が語る“スティーブの素顔”
スティーブ.ジョブズ氏の長年の親友であり、指導者でもあったジェイ・エリオット氏が来日した。まだ20代だったころのジョブズ氏は「30歳以上の奴らは信頼するな。ただし、ジェイは除く」というほど、エリオット氏を慕っていたという。エリオット氏に、アップル成功の秘密やジョブズ氏との関わりについて聞いた(聞き手:林信行)
は、数え切れないぐらい、良いことを沢山語っている。どれも、日本の多くの企業が忘れていることのように思う。
1) 我々はある時、日本に来る途中の飛行機の中で、レーザーライターをデザインした。これはキヤノンとの仕事だ。しかし、モノによっては自分たちで作れないものもある。(中略) 我々がソニーやキヤノンといった会社と関係を築いたとき、彼らをアップルの一部として考えた。彼らはアップルの文化をよく理解していたし、我々も彼らに我々の一員とみなしてコミュニケーションをしていた。これもアップルが成功した要因の1つだ。
2) アップル成功の秘密は、常に製品の向こう側にユーザーがいることを意識してものを作っていることだ。これこそが彼が最も強く情熱を見せたところでもあった。そして、これは私と出会った1980年から、亡くなる1カ月くらい前まで、まったく変わらなかった。
3) 、思いを込めた製品がすべて世にでるようにがんばっていた。シンプルに保って、例えば、制限を設けて3,000個だけ製品を作るような愚行はしない。これこそが彼の成功の秘密だと思う。
4) ここ日本には、それと同様の、経営者の手本ともいえる人物がいる。ソニーの盛田昭夫氏だ。盛田氏は日本のスティーブ・ジョブズだった。しかしその後、ウォークマンにいったい何が起きたのか? 彼らはユーザーに何が起きるか注意を払っていなかった。最初はユーザーを見て製品を作っていたが、その後、ユーザーにも変化が起きるということを理解していなかった。
5) ホンダにしてもソニーにしてもそうだと思う。これらの会社は、創業者がどうやって会社を今の位置に持ってきたのか分かっていない人が会社の経営にあたっている。そこへ至るまでにどんなトリックを使ったのかも。そういった管理型の経営幹部は、「何も変えたくない」「何も間違えをおかしたくない」ということになりがちだ。
6) 自分の会社の製品がベストなものであることを目指すべきなのに……。
作るものが電話だとしてもカメラだとしても、会社が2,000人規模だろうが、3,000人規模だろうが関係ない。とにかく自分自身がその製品の最初のユーザーにならなければ。
7) ビジネスをしていくうえで、自身の洞察を深めなければ得られない部分もあると思う。「自分はそれにふさわしい情熱を持ち合わせ、すべてをこれに賭ける覚悟があるのか」。これがいわゆる「リスクを取る」という部分だが、それができるかどうかで人は分かれると思う。
8) 彼が成功したのは、製品を思い通りの形で実現する信念の強さのおかげだ。スティーブが怒るのは、その製品が彼の望む品質になっていないときくらいだよ。
9) ホンダやソニーも同じだと思う。まずは自らのルーツに立ち戻り、この会社はなぜこの世に誕生したのか、自分たちは誰なのかを知る必要がある。
私はプロダクトオーガニゼーション(製品を中心とした組織)というものを信じている。企業はもっと製品に戻る必要がある。そして、まずは製品を削る必要があるだろう。例えば、ソニーは製品が多過ぎて、もはや何をやっているのかも分からない。まずはシンプルな状態に戻ることが何よりも重要だ。
10) スティーブも、まず自分自身のために製品を作った。もしそれでほかの人も気に入ったら、彼から買えばいい。もし、気に入らなかったら買わなければいい。こういう姿勢だ。あなた自身が1番のユーザーでなければならないという思いに取りつかれること。
11) アップルの人に「損益計算はどうなっている」なんて聞いても、例え相手がスティーブ・ジョブズでも「知らないよ。それはCFOの仕事だ。私はそんなことは心配しない。よい製品を作れば、自然と利益はついてくる」って返ってくるだろうね。四半期ごとの決算ばかり気にして事業をしていてはダメだ。もっと遠くを見ないと。
12) コンシューマー製品を発売するようになってからは、もっとリリースのタイミングに気を配るようになってはいたが、最も重要なのは、準備が整うまで製品を出すなということだ。
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