これらを総合すると、どこまでが必要な機能で、どういう課題があるのかみえてくる。そこで、以下の観点に関してまとめてみた。
- フルサイズセンサーとAPS-Cセンサーの面積差。イメージサークルの違い。レンズが重く高価になる理由
- どれくらいの画素数が必要か?
- ローパスフィルタ・レスの本当の効果は?
米国の雑誌は、広告ばかりでペラペラで中身が無い雑誌が多いが、日本の雑誌は記事も充実している。出版不況とも言われているので、よい雑誌を助けてあげて欲しい。
関連投稿)
関連した投稿は以前も書いている。以下も参照して頂きたい。
2013年2月11日月曜日: デジカメの撮像センサーは本当に大面積が必要なのか??
2013年1月7日月曜日:ミラーレスとコンデジの比較: Olympus E-PL3とCasio Exilim EX-ZR20
上記雑誌p.24-31にSonyのフルサイズミラーレスカメラの新製品 α7, α7R の紹介記事がある。このカメラには非常に興味があるが、それは別稿とする。
α7は、従来のNEXシリーズと同じ、Eマウントを採用しており、APS-CセンサーであるNEX向けのレンズも使うことができる。さらに、APS-Cレンズ対応時の自動クロップがoffにでき、その効果を示した写真が掲載されていた。これをみると、フルサイズセンサーとAPS-Cの面積差がわかる。以下に写真を引用する。
APS-C用のNEXレンズをつけて、自動クロップ(つまり自動拡大)をoffにして撮影したものが右である。右の写真はフルサイズセンサーで得られる画像全体であり、このうちAPS-Cセンサーで撮影している部分だけを拡大すると左の絵になる。つまり、下写真の右側に書き込んだピンクの枠内ぐらいの部分だけを撮影するのがAPS-Cカメラである。
これをみると、APS-Cカメラ用のレンズのイメージサークル(レンズが像を結ぶ範囲)がわかる。APS-C用カメラでは、APS-C用のレンズで周辺減光する結構ぎりぎりの部分で、画像を捕らえていることがわかる。またピンクの枠の外側の部分だけ、フルサイズセンサーの面積は広い。総面積にして約2.3倍になる。同一画素数ならば、画素面積が倍になるので、感度は高くなり、暗いところでのノイズは減る。つまり特に暗いときの画質が良くなる。
いずれにしろ、フルサイズ用のレンズは、より大きなイメージサークルが必要になり、大きく、重く、高価になる。その広いイメージサークルでシャープな像を結ぶことを求めれば、ますます高価になるのは致し方ない。
もちろん、APS-Cよりもさらにセンサーが小さいフォーサーズとか、コンデジはさらにレンズが小さくなるのも分かる。値段や性能は市場規模(開発者数) の影響も受けるだろうが。。
どのくらいの画素数が必要か?)
同誌、p.28に、2つのフルサイズセンサー、デジタル一眼
Nikon D600(2,420万画素、フルサイズ)とNikon D800E(ローパスフィルタなし、3,630万画素、フルサイズ メーカーサイト: http://bit.ly/17bsKXR )の解像度の比較があった。以下に引用する。
左が2,426万画素のD600、右が3,630万画素のD800Eである。一番上の写真の赤丸の部分を3段階に拡大している。A1相当拡大までは、ほとんど差が分からない。
さすがに、一番したのB0相当まで拡大すると、D800Eのほうが、「若干解像度が高いかな。。」と感じる程度である。しかもB0というのは、下の写真のように、横幅145センチもある写真であり、展覧会とか特大ポスターでないかぎり、この大きさに延ばすことはありえない。
2,426万画素のフルサイズセンサーですでにここまでの実力なのである。
ローパスフィルタ・レスの本当の効果は?)
http://ascii.jp/elem/000/000/817/817066/index-2.html に記事と解説があるように、ローパスフィルタは、本来撮像センサー上で、RGB画素が別の位置にあるため、モアレ縞や疑色が生じることが有り、それを防ぐために入れている。が、一方でレンズ本来の解像度が出なくなると、あえてそれを外した機種もで始めている。
前節のD800Eにしても、ローパスフィルタ・レスにすることで、大分値段が上がる。
Sony α7Rも、画素数が増えて、ローパスフィルタ・レスになる一方、像面位相差AFがなくなり、連写速度がおちて、さらに値段があがる。
D800の画素数は対抗馬のCanon EOS 5D Mark III の画素数22Mより多いものの、撮影間隔は大分落ちている。
実験)
ペンタックスのAPC-Cディジタル一眼新製品K-3 (2,435万画素) は、撮像素子を振動させ、ローパスフィルタとして機能させている。したがって、ローパスフィルタ強・弱・無しの画像がとれる。まず、以下が写真全体である。ローパス強・弱・OFFの3つで撮影した写真で、黄色長方形で囲ったの2箇所を拡大して比較している。
以下に結果を引用する。上から、ローパス強・弱・OFFである。
まず、赤い服の部分では、紙面上でも全く効果の差がわからない。
一方で、髪の毛の部分では、ローパス offでは、解像感があがったようにも思えるが、逆に、ジャギー(つまりギザギザ)がでているようにも見える。
ともあれ、これだけ拡大してごくわずかの差、かつ、良くなる一方で、欠点も見えるというところだと思う。
まとめ)
- フルサイズセンサー向けのレンズでは、かなり大きなイメージサークルが必要になり高価になるのは当然。フルサイズに期待するのは、特に暗所での画質
- 画素数は2千万画素あれば、もはや十分
- ローパスフィルタ・レスの効果は気分程度
冒頭記載のCAPA誌 p.52の伊藤淳一のコメントが正鵠を射ている。
「光学ファインダの一眼レフはAPS-Cサイズに任せて、フルサイズはミラーレス化すべし。」
理由は、 光学ファインダ(ミラー有り)一眼が優位性を有しているのは、動体に対する追従性である。つまり、
- 原理的に応答遅れのない光学ファインダ
- 合焦点の速い位相差AF (私から補足: ただし、ミラーレスにも像面位相差の高速AFがはいってきつつある。。α7の像面位相差の測距点は117点もある)
一方、APS-Cは動体撮影に向く
- 焦点距離の短いレンズで望遠撮影でき、超望遠での動体撮影のチャンスがふえる
- フルサイズに比べ周辺視野までAFでカバーできて動体に向く
ということで、高画素・静止系はさっさとミラーレス大型センサーカメラに任せろ。というもの。それを先駆けているSony α7 には脱帽した。
つまり、暗いところで動体を撮りたいなら、光学ファインダー一眼レフもよいと思うが、その場合には、EOS 1D-Mark IV (Canon EOSの最高級機。フルサイズ、1,610万画素だが、10枚/秒の高速シャッター間隔が可能 http://ja.wikipedia.org/wiki/キヤノン_EOS-1D#EOS-1D_MarkIV 参照) のように、画素数を減らし、感度を上げたカメラ(最高ISO 102,400が可能、常用最高ISO 12,800) を選ぶのが良いかもしれない。スポーツカメラマンとかで、このカメラを使うプロが多いように思う。画素数も多く、動体も、、、と、狙うと虻蜂取らずになりかねない。。。どうせ、明るい望遠レンズは高価だし重いのだから本体を複数持つ選択肢のもあるのでは。。
高画素数、ローパスフィルタ・レス、光学ファインダー一眼の、重たいフルサイズを持ち運ぶ最大の理由は、所有欲というか、自己満足というか、見栄なのかもしれない。もちろん、それは立派な理由である。