自動車はできるのに、家電はなぜできないか? http://bit.ly/Rbfdvz というblogがFacebookで少し話題になったようである。
- 自動車は好きでやってる、家電は仕事でやってる
- 自動車は開発主査、主幹がそのモデルを仕切る
もちろん、自動車会社には賢い人間が入り、電機やITメーカは、頭の悪い人間ばかりが入社したということなど、あろうはずがない。むしろ、一斉を風靡した電機メーカのほうが優秀な人を集めたのかもしれない。少なくとも同じ条件にあった、Apple Computer もつぶれかけて、大復活を遂げている。
圧倒的に遅れていた日本の半導体と家電電機産業を発展させ、1980年代には日本をして、世界の工場を言わせた、エンジニアや経営者たちが、この産業界にいたのである。
「好きでやっているとか仕事でやっている」で、なるほどなぁと思ってしまった人が多かったようだが、これは、どちらかといえば結果であり、その原因を解析しないと、解決には近づけない。物事の解析に対への取り組みかたの改善に期待したい。
不連続変化への対応)
クレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)が1997年にイノベーションのジレンマ http://bit.ly/KcERMoで示したことが当たっていると思う。
つまり、企業というものは、大企業であれ、中小企業であれ、不連続変化が起きると対応できない。
不連続変化に対して対応できなかった企業の例と引き起こした不連続変化)
- パソコン業界:Apple (Jobsが戻る前は死にかけている)、Gateway、日本の主だったパソコンメーカ - 理由:IBMPCによる部品のコモディティ化による価格の急激な低下
- ワークステーションメーカ: SGI(Silicon Graphics), HP, Sun microsystems : PCの急速な高性能化(速度、メモリ容量、OS)、PC用グラフィックチップの進化。
- 半導体メーカ: IBM, Motorola, NEC, 日立, 三菱など - 理由: 製造技術が装置メーカを通じて流出、プロセスが微細化するごとに市場支配力が変化, 設備産業であり製造コストは量を造れば造るだけ下がる-つまり常につぶし合い競争
- 通信機器メーカ: 富士通、NEC: ATMから、TCP/IPというパケット通信への変化
- 米国航空会社: United Air, South West, etc. : 911テロによるチェックインの煩雑化、車移動への回帰による自動車離れ、格安航空会社の台頭
- 銀塩フィルムメーカ・カメラメーカ : コダック : ディジタルカメラの台頭
- 日本の航空会社、JAL : 整備不良の連続
- 自動車: 三菱自動車 : リコール隠し
- 放送: 各放送局 : インターネット化、放送離れ、スマホ・tabletでのインターネット視聴
- 出版: 特に流通系: 電子ブック化
さらに、CO2規制、エコ化の波はあるが、これは10年先まで政府が計画をたてている。自動車産業を窮地に陥れるような破壊的な変化は以下が考えられる。
- EV化により、部品がコモディテイ化して、急速な価格破壊がおきる
- ガソリン代が極めて急速に高騰する
- 道路の制限速度が一斉に引き上がられるか、引き下げられる
ナゼ不連続変化が起きると企業は持たないのか)
これは、簡単だと思う。企業は、組織を維持しないとならない、不連続変化で産業構造が変化し、収入が減れば、コストダウンに走らざるを得ない。そのときやるべき選択肢は、以下。
- 経費削減
- 人件費削減
- 一律給与カット
- リストラ
経費削減は、長期的に魅力のある製品を造る能力を下げる。研究をやめ短期的な製品開発に走れば、収益率が高い製品が作りにくくなる。
やらなければならないことは、売れる製品を作って収益構造を改善することなのだが、これには時間がかかる。すると経費削減を行わざるを得ない。
また、以下にも書いたように、特に、大企業は大胆な意思決定ができないので、売れる商品を絞り込んでそれに力を注ごうとはなりにくい。即効性のある経費削減になるのは、いたしかたないのかもしれない。
2012年2月1日水曜日: 大企業病と恐竜との符合 - 哺乳類,昆虫型企業へ
これらは、破壊的技術の登場で価格破壊がおきたり、市場編かが急速に進むほど、大きなダメージを会社に与える。
そして、コストカットの仕事が会社の主な仕事になっていけば、技術者の発言力は弱まり、技術が好きで好きでしょうがないという仕事がやりにくくなってゆく。本当に儲かるかどうかが常に問われ、どれだけ短期的に儲かるかのほうが重要になっていく。
ハラが減ったタコが、自分の足を食べて急場をしのぐように、急場はしのげるものの、餌をとるための手足がなくなってしまうように思う。
不連続変化に耐えるには)
やはりAppleのSteve Jobsや、IntelのAndy Groveのようなビジョンをもった経営者の登場が必要だと思う。価格破壊に耐えつつも、自社のコア技術を十分理解し、製品とビジネスのビジョンを示し、必要なところに重点的に開発投資をするのである。
Apple http://bit.ly/NNwGdl は、スカリー http://bit.ly/NNwAm3 がいたころには、経費削減の嵐で、消費者に訴える製品が全く作れなくなっていた。これをJobsが、デザインによる魅力有るiMacの登場で回復させた。また、米国やヨーロッパでは、50ドル程度の格安携帯が主流だったところに、600ドル以上のiPhoneを投入して、市場を奪い取った。主だったポイントは以下であろう。
- iPodでつちった音楽プレーヤとの融合
- iTunes ストアという、音楽、映画、アプリの流通形態
- 格安で追加できるアプリ
- 極めて急速なソフトウェアの進化
- 旧型機でも格安ソフトの追加で、同じ機能を実現
- 通常のwebのブラウズ機能
- 使いやすいUI
- デザイン性とブランド
また、iPhone、iPod、iPadでは、端末のソフトウェアのアップデート時に、データを一旦全ぶ消去して、あらたにiTunesから転送し直す構造をとった。これは、従来のOSのアップデートではあり得ない形態である。が、これにより、ファイル転送母艦である、iTunesでファイル変換をかけるので、従来互換をしがらみを一掃することに成功したと思う。
Intelは、2000年頃には、まだNECやIBMより半導体技術が劣っていた。が、x86プロセッサの訴訟で競合を退け、他のLSIの10倍近い付加価値でCPUを売ることで、膨大な利益を上げ、それを使い、優秀な技術者をやとい、あっというまに、半導体の製造で不動の地位を気づきあげた。まさに、「勝ち馬にのる。」を実践したのである。日本の半導体産業や電機産業が調子の良いときに、調子が悪くなっても大丈夫なように、「勝ち馬にのる」をやって、十分準備していれば、今のようにはならなかったと思う。規模の効果があるので、一旦大きくなれば雪だるま式に強くなるはずなのに、もしも、その分野が失敗したときのために、他にも投資しておくことになり、主力への投資の再循環に踏ん切れなかったのであろう。。
さらには、以下の後半に書いたように、ビジネスやマーケットなど様々な視点を持つ人の意見を尊重するのも、不連続技術時代の生き残りには必要に思う。
2012年9月6日木曜日 :ピーターの法則
上記に書いたように、技術者冥利につきるような会社は、むしろ不連続時代を乗り越えられず、技術者がマーケッティングやビジネス部門の奴隷として使われるくらいのほうが、強いのかもしれない。
凸版印刷 http://bit.ly/NNyV0h なども、出版不況になるなか、半導体のマスク装置とかに転換を図ってきたと思う。
銀塩カメラメーカも、コダックのように対応できなかったところと、良い経営者がいて生き残った、キャノン、ニコン、富士フイルムなどと明暗が分かれたように思う。
日本で100年以上の老舗は)
日本には、老舗が世界一多いらしい。http://bit.ly/NNxPl5 によると、3,146社もある。
つまり、会社を長持ちさせるのは、日本人は得意なのだろう。既得権益を保護するという商習慣だけではなさそうに思う。
http://bit.ly/NNxKhe に老舗の一覧がある。
たとえば、竹中工務店 http://bit.ly/NNyfbc は、江戸時代初期の1610年の創業である。今と全く違う建築形態であったが、その後の建築手法の変化に良く追従していると思う。
また、日本に圧倒的に多いのが、和菓子関係の店舗であるが、真空パックを使ったり、デパートに卸したり。味覚の変化にあわせて、洋菓子風の 商品を作ったり、不連続ではないものの変化には対応できているように思う。