1. 排気量
- ミラーサイクルの吸気バルブが可変タイミングになっているようです。
初期型(NHW10)のはプリウス本にあった数値から、現行3代目(ZVW30)のはバルブの開閉角度から計算してみました。後者は、コンロッド長が無限の前提なので、誤差があると思います。計算に用いたexcel sheetを末尾に追加しました(2011/10/22)。
プリウスは、負荷が軽いときは、実は軽自動車なみの排気量なんですね。
軽のハイブリッドは、排気量にモータ分が加算されるのですが、プリウスはエンジンの排気量で見てもらえるようですね。もっとも、ミラーサイクルなので、実効排気量は少ないですが。
税法上プリウスの排気量は? ) http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1110278271
表示排気量 最大排気量 最小排気量 (単位は cc)
NHW10 1,500 1,200.00 400.00
ZVW30 1,800 1,336.33 712.88
2. トルク計算
ZVW30のモータトルクを計算しタイヤ径から発進力を、BMW323i(現行?)、ポルシェカレラ911と(無謀にも)比較してみました。
結果 発進力は、
プリウス 573kgf
BMW 323i 1,157kgf
ポルシェ911 1,345kgf
となりました。モータのトルクしか計算に入れていません。実は、プリウスの動力分割機構は、計算するとエンジントルクに対しては、常にオーバドライブになっています。これを入れて再計算したものが、末尾のexcelシートです。
とにかく、トルクとしてのエンジンの寄与分は小さく、トルクが必要なときは、かならず発電機(MG1)経由でモータ(MG2)を動かす必要があり、ある意味シリーズハイブリッド的な動作になります。そもそもエンジントルクが細いうえに、常にオーバドライブ状態なので、パラレル動作といっても、定常走行のときのアシスト程度に過ぎないように思います。これは、トルクを発生するMG2のリダクションギヤのほうが幅が大きい上に、プラネタリギヤが5枚。一方、動力分割機構のほうはプラネタリギヤが4枚ということからも、示されます。
加速時にもパラレルハイブリッドとしての効率を改善するには、クラッチを介して多少の変速機構を入れたほうがいいかもしれません。これもあって、プリウス総括に書いたような特許が出願されているのかもしれません。もちろん、コストと重量増、エンジン周りのサイズ増大というデメリットとのトレードオフだと思います。世の中は、EVやプラグインハイブリッド、レンジエクステンダーを利用したシリーズハイブリッドへ移行しつつあるので、今のプリウスの機構のままでも、特に問題はないかもしれません。
いずれにしろ、走行時は実行排気量を吸気バルブの閉じタイミングで可変し、ポンピングロスを減らし、燃費効率のよい排気量で運転し、一番燃費のわるい発進時はモータトルクを用いることで燃費を向上させているのだと思います。よくエンジンサイズが大きすぎるとかいいますが、実際には吸気タイミングを調整し、実効排気量を可変しているようです。
ハイブリッドだから発進・停止をしないときには燃費は悪いと思われがちですが、上記のような排気量の最適化に加え、ローラカムシャフトにしたり、EGRで全域ストイキ(理想空燃比)にしたり、ポンプの電動化で、フリクションロスや冷却ロスをなくしたり、また、寒冷地ではヒータのための暖機ロスを減らすために、排気から熱回収をしていたり、ボンネットやリアゲートをアルミ合金にしたり、ドアパネルを発泡材にして軽量化したり、徹底的に空力を改善したり、かなりがんばっているようです。
3. 検証してみました。
発進Gを含めて計算してみました。
完全にぴったりではありませんが、ポルシェとプリウスの0-100km/h加速はだいたい近い傾向が見られます。以下にあるGは、トルクと車重から計算した、発進加速(重力加速度が1G)です。車速が増えるにつれトルクも減るし、プリウス以外は、ギヤチェンジによるロスも入ることを考えると割りと良く近似できているように思います。
秒
ポルシェ911の実測 0-100km/h加速 4.50
0.851 Gでの計算値 3.33
Prius での実測 0-100km/h加速 8.50
0.425 Gでの計算値 6.66
BMW323i での実測 0-100km/h加速 7.40
0.767 Gでの計算値 3.69
911カレラSは、本当に0-100km/hの加速が3.3秒です。すごいですね。
テスラロードスターは、0-100km/h加速が3.7秒。
変速機なし(以下)で、この性能が出せるのは、モータの実力ですね。
テスラのメカニズム)
値段は1,810万円)
3. タイヤの摩擦係数
実はタイヤの摩擦係数は普通のタイヤでも0.8くらいあるようです。
加速時には、タイヤの加速モーメントの関係で後輪加重になります。オートバイが発進時にウイリーし、急停車時にジャックナイフになる原理です。その点でも加速は、4駆でなければ、FRやRRなど後輪駆動が有利です。
F1のタイヤは、ガムテープのように溶けて張り付くので、摩擦係数は1.6近くあるようです(以下)。最近は、グリップを下げるように、まだ溝入りなのでしょうか。。
さらにコーナリング時(前のブレーキング?? ならびに横G??) には、ダウンフォースをかけているので、4.5Gくらいかかるようです。
F1ドライバのブレーキングは、ほんとうに限界ぎりぎりだし。コーナリングもスピンぎりぎりですよね。
昔、古館一郎だったか、F1ドライバのDavid Coulthardの運転するHonda NSXで鈴鹿を周回するビデオを見ました。Coulthardは気楽に話しをしながら運転しているのに、古館は、恐怖のあまり全く実況できず、車を降りてから、ふらつく足で、二度と乗りたくないと言っていたように思います。
David Coultherd)